今日は県立美術館ホールにて、OiBokkeShi「ポータブルトイレットシアター」を観てきましたよ。例によって感想文。

これまで先鋭的な舞台芸術作品を招聘・制作することを中心にしていた美術館が、ついに社会問題をテーマにしたクリエイションに向き合いだした、記念すべき第一歩だと思います。この後、鳥の劇場の中島さん率いる「じゆう劇場」の招聘など、いまの文化行政が向かうべき大切な一面に取りかかったこと、本当に嬉しく思います。
(しかし苦言①、「地域のアトリエ」と題したこのシリーズは、美術作品を沢山所蔵し、創作室も設けている美術館だと、このタイトルでは事業の目的は分かりにくいし、おそらくは社会問題×芸術に限らず、幅広い解釈を持たそうという意図があったとしても、タイトルでなんのこっちゃ分からないのはもったいない気がしました。)

出演したのはこの数年、噂で聞いていた岡山の菅原さん率いるOiBokkeShiさん。
今年、公立文化施設協会の全国大会がかるぽーとで開催され、その分科会で「文化と社会包摂」というパネルディスカッションでパネラーとして菅原さんが参加され、介護や福祉の現場に、演劇的要素を持ち込むことの効果についてお話を伺っていたので(そのトークの後挨拶したら、4年前に四国学院大学の西村さんが初めて蛸蔵に持ってきた作品「イワーノフ」に出演されていて、驚いたことでした)、今回の招聘のタイムリーさに、喜び勇んで会場に向かいました。

作品の「ポータブルトイレットシアター」は、齢92歳、そして同い年の認知症の奥さまを介護する、看板俳優おかじいの日々をなぞったもので、奥さま役の方はお若い女優の金定さん、ケアマネージャー役を菅原さん、そして劇中の演出家をシアタコ藤岡さんが務めるというものでした。
夫婦の設定なのに、極端に年齢が違うのは、認知症を煩った奥さまの世界は、21歳当時の暮らしのため、92歳のおかじいとの暮らしではいろんな差異が生じて、当然コミュニケーションが取れない。
そこで菅原さんがおかじいに、彼女の見える世界を演じることで、コミュニケーションを築けないのか?と勧めるものでした。

基本的な流れは情報として知っていたのですが、それでも会場に入った瞬間に見えた、綺麗なホリゾント(夜の海だったのかな)、整列された袖幕、そして舞台一面に敷かれ、蹴込みまで覆われたグレーの地がすりが、まるで神聖な斎場のようにも思え、その舞台に立って信じられないようなエネルギーを放つおかじいという存在に、ただただ圧倒された2時間半(トーク含め)でした。

公演後のトークでは、介護現場でのいゆる認知症を持った方に対する介護士としての接し方が簡易ワークショップとして実演され、間違った認識の人に事実を説明して正すのと、その世界を受け止めて本来の目的に持っていくのと、わかりやすく実技を交えて紹介されました。(苦言②ですが、こちらの簡易WSも事前に高知の演劇人を仕込んでいたのですが、この内容だったら客席にいる人を普通に選んでやった方が面白かっただろうし、なんかちょっと高知の演劇人・客席に対する信頼関係が上手く築けてなかったのかなーなんて思いました)

本企画は今日から3日間、美術館で開催され、明日の日中は介護の現場に携わる方を対象としたトーク、夜は地域の表現者を対象としたトーク、あさっては映画上映会と公開ワークショップを行うそうです。

この企画を立ち上げた以上、どれだけの人を巻き込んでいくか、いわゆる美術館サポーター以外の方にどれだけ届けられるかが肝になると思います。
どうぞこの企画が美術館のこれからの一翼を担うものになりますように!