からくり劇場「歌わせたい男たち」(2018.11.23)

本日は蛸蔵にて、からくり劇場「歌わせたい男たち」を観てきましたよ。例によって感想文。
からくり劇場、カラクリシアターの姉妹劇団は、旗揚げ直後はどっちがどっちやら分かりにくかったのですが、3年経ってもうしっかり劇団の個性が分かるようになりました。
アングラ要素を散りばめながらロマンいっぱいの世界を描く谷山さんのカラクリシアターと、既成台本を丁寧に描きながら時代を浮かびあがらせる松田さんのからくり劇場。なるほど、たしかにこれは似て非なる劇団だ。

今回のからくり劇場は、思いっきり社会的要素を持ちながらも絶妙のバランスで成立している名作コメディを持ってきました。
国歌斉唱をめぐる当時の(いや、今でもか)社会問題を、双方の言い分もしっかり描きながら、どこか冷めた視点でユーモラスに描く戯曲。その本にしっかり沿って、丁寧に丁寧に作る演出にはうなってしまいました。

今回5名の登場人物だったのですが、5人の役者の声が非常に良く、というのもベテランから若手までの座組みだと、声量の揃わなさは良く感じるのですが、今回は若手とされるケンケンも春菜さんも全く引けを取らず、特にケンケンのテンションの高さと役のはまり方は見事でした。
はまり役と言えば、国歌斉唱を拒否する「ガチガチの左翼」と称される社会科の先生役は、当初川島さんだったのが、事情により刈谷さんに直前にキャスト変更になったそうですが、こちらも見事なはまり役で、物語終盤の校長との最後のやり取りの「本当の気持ちを聞かせてくれよ」のくだりは、刈谷さんと谷山さんだからこそのグッとくる場面でした。

一方、基本1対1か1対2で物語が展開していくなかで、攻めと受けのバランスや呼吸が、もっとこのメンバーだったら上手くできるんなじゃないかとも思ったり(このへんプロレスファンっぽい感想です)。
みなさん力のある役者さんで、エネルギーの発し方がしっかりしてるからこそ、受けて揺らいだり弱ったりといった瞬間瞬間のパワーバランスの変化をもっと楽しみたかったです。

最後に、ぼんやりと、それぞれの中にある「正しさ」や「正義」の揺らぎ方ってのは当たり前にあるんだなー。
自分の中にある「正しさ」ってなんなんだろうなー。なんてことを語りあいたくなる良い作品でした。
土日も少しお席あるみたいですので、お時間ある方はぜひぜひ見に行って、語りあいましょう!(飲みながら)

みなさん、あと2ステ、頑張ってくださいねー!!