マームとジプシー「BEACH」(2019.02.09)

昨晩は四国学院大学ノトススタジオにて、マームとジプシー「BEACH」を観てきましたよ。例によって感想文。
須崎の稽古中に、領木さんから「吉田さんはマームとジプシー観に行かないの?」と聞かれ、「なにそれ?」って返すくらい無知な私でしたが、劇団主宰の藤田さんは若くして岸田戯曲賞を受賞されたり、現在非常に注目されているカンパニーということを教えてもらい、これは行ってみようとなりました。
しかし何度も書いていますが、ノトススタジオ、そしてシアターねこ、さらにあかがねミュージアムと、四国の演劇鑑賞事情はこの数年で劇的に良くなりましたね。カンパニー側の、東京一極からの意識の変化もさることながら、受け入れる側の土壌を作り・育てているこれらの劇場は本当に素晴らしいです。恩恵こうむりまくり。

さて作品について。
この作品は、ドイツのシューズブランド・trippenとの協働製作という形だそうで、いきなり「??」となる展開ですが、trippenの冊子に書かれた「アートが現在の世を表す手段として機能していく中で、断絶化され不安定な社会の中、足場を失わずに、次代に向けた普遍的なデザインに取り組む」という文章に、目から鱗が落ちたようでした。当たり前のことだけど、全ての行いは今の世を表すんだよなー。

舞台はほぼスクエア(ちょっと長方形)。3面に客席を配置し、アクティングエリアは白いラインで区切られ、その中にビーチを印象づけるパラソルやサマーベッド、流木などのオブジェが並ぶ舞台。
途切れることなく流れる波の音と、軽快でシーンごとに心情も表現されるようなBGM(スピーカーはおそらくBoseのL1だと思うのですが、あれを演劇公演で使うのをはじめて見ました)。
そんなオシャレな舞台に登場するのは、これまたオシャレな衣裳に身を包み、オシャレなサンダルを履いた俳優さんたち。
それぞれが散文詩のようなモノローグを散りばめながら、少しずつ場所が浮かび上がり、少しずつ関係性が浮かび上がる作り方でしたが、その言葉のひとつひとつがキラキラしていて、かつ「音」としても心地よく、この台詞の出し方や作り方、どこかで感じたような…と思い返すと、あ、極東退屈道場だ。全然違う劇団がこうやって頭で繋がる不思議。

海の家で働く女性、東京から毎週通うサーファー、夏の間ホテルに滞在する姉妹、10年前の記憶を頼りにここに尋ねてくる女性。オープニングでは、まるでアイコンのような無機質なイメージの登場人物が、サングラスを取り、相手に投げかける台詞も殻にこもるような感じから少しずつ熱を帯びていく作り方。客席にいる自分も自然とそれぞれの人物に愛着を感じます。

物語は、ひとりの登場人物が抱えている家族の問題が軸となっていましたが、そこに限るとお話の帰結が性急すぎるかなーとは思いました。が、それよりも、場面場面のモノローグの言葉の美しさにやられてしまったなー。
10年前にこどもふたりでここを尋ねて、入ったレストランでスープだけ頼んだってくたりは、胸が締め付けられました。
また、バーベキューのシーンのみんなの酔っ払い具合w。みごとな描写やったなーw。

観劇後は、夏が終わる儚さがぐっと胸に染み込んできたような、なんとも言えない切ない気持ちで帰路についた次第です。

本日ノトスで上演される、この続編である「BOOTS」はきっと冬の物語なんだろうなー。ああ、両方見たかった。
またノトスで観劇できる機会がありますように!!