昨晩は33番地稽古場にて、おさらい会「息子」を観劇してきましたよ。例によって感想文。
おさらい会は日本の近代戯曲を取り上げ、今回のような劇場ではない場所でリーディング形式での発表をされるのと、大豊町八畝地区での発表を中心とした「地域に演劇を届ける活動」が活動の中心となっているようです。
一度上演した作品をレパートリー作品として、条件の違う会場で上演を重ねて精度・深度を高めていくという作り方、なるほどです。この先には、何かしらの完成形を目指しているのかしら?そうでなかったとしても、上演を重ねる大事さというのは確かにありますね。
また取り上げる作品も絶妙で、近代作品から今の時代が見えてくるこの感じ、西村先生ならではなんだろうなー。

さて今回の作品「息子」は、新たにレパートリーに加えるべく取り組んだ作品とのことで、舞台に立つのは劇団の山田君、山崎君に加え、客演に川島敬三さんを迎えた男性3名の布陣です。
ランタイムは約30分。この中に、9年前に江戸から大阪に行き、成功した息子を信じている父親と、身を持ち崩し、犯罪に手を染めた息子が再会し、別離するさまが描かれます。
劇中、父親はこの男を息子と気付いたかどうかが演出の解釈によって大きく変わる部分ですが、自分は再度会った場面では、父親は気付いているものの、あえて気付かないふりをしたんだろうなーと思ってます。この捉え方が、観る人によって違うことこそが演劇の面白いところだと思います(し、終演後の答え合わせには極力参加したくないのです)。

火の番をしている偏屈な老人のところにやってきて、断りを入れて暖を取らせてもらう男。固く緊張している身体が、老人からほどこしを受け、少しずつ心と身体がほぐれていくさまと、身の上を聞かれた瞬間に動揺する身体と視線の変化。山田君の俳優としての素晴らしさがここに凝縮されてましたね。
敬三さんもみごとなはまり役で、心情の変化をほぼ出さないことこそが、この老人の人生そのものを物語っていたように思います。
舞台装置や照明に頼らず、身体ひとつで劇世界を立ち上げる3人の俳優の技量の高さ、見事でした。

エンディングは非常に印象的でした。
遠くに去って行った山田君山崎君が立ち上がり、舞台前に移動し、そしてセンターでずっと座っていた敬三さんがゆっくり立ち上がる。
この時の3人の発するエネルギーと視線の強さに「おお!」と思いましたが、山田君と敬三さんに比べて、山崎君は少し目が泳いでいたように思えました。おそらくエネルギーを爆発させることにかけては一番の山崎君なのに、若干集中力が欠けていたのは、なにかしら消化不良な部分があったのかなーなんて思った次第です。

今回が初演のこの作品。通常の劇団だったらこれでおしまいとなるんでしょうが、たとえば今回上演したことで生まれた課題や、新しい発見などを盛り込んで、これからどんな作品に変化していくのか楽しみにしています。
みなさん、お疲れさまでした!