演劇祭KOCHI2019、4組目はカラクリシアター「永遠のイノセント」でございました。
カラクリシアターさんの圧倒的な動員力はさらに凄いことになり、今回は蛸蔵に124席の客席を組み、水曜から日曜までの全5公演が本番10日ほど前に完売するという…。
高知の小劇場の劇団で、600の動員ですよ!さらに全公演完売なので、ここからさらに伸びていたという、おそるべし!カラクリシアター!

舞台の方もさらにパワーアップしていました。
昨年の「エデンの月」のパネルを上手く使った舞台転換に加え、今回は箱形の舞台装置を回転させることで、さらにダイナミックな舞台転換を行っていました。
「万歳一座か!」と唸ってしまうくらいの見事さ。しかもこのプランと叩きは劇団のみんなだけでやっているというのも凄い!
ここ最近は、一杯飾りでがっちりセットを組む姉妹劇団のからくり劇場と、ダイナミックな舞台転換のカラクリシアターという感じにも分かれてますね。そんな違いも面白い。

さあ、作品について。
カラクリシアターは谷山さんのオリジナル戯曲を上演しますが、今回は「そうか、あかんか」という一言だけで多くの人が「あの事件のことだ」とわかるくらいの、京都で起こった認知症母殺人心中未遂事件をテーマに描かれました。
多くの方が報道などで胸を痛めた事件で、北海道の姉妹の凍死事件同様、本来受けられるべき社会福祉のセーフティネットが機能しなくなっているという、今の社会の問題の根源を示した、あまりに悲しくて有名な事件です。

果たしてこの事件を谷山さんはどう描くか。
どういう想いやメッセージを込めるのか。
その答えは「まっすぐな親子の愛」でした。

個人的には意外にも思えるほどの正面突破。
現在と過去の思い出をうまく交差させながら、どんな時にも変わらない親子の愛情を描ききる形。
登場人物は、デイケアの職員さんも、ヤミ金融のヤクザも、福祉事務所の職員も、記憶の中の友達たちも、誰も悪人がいない、誠実で、優しい世界。
だから、そんな優しい世界でなぜ、主人公は追い込まれていくのか。お母さんとの約束を守るというエピソードはあったとしても、やっぱりその疑問は晴れなかった印象です。

認知症の母親を介護する場面は、今回主役の刈谷さんが以前に蛸蔵ラボで上演した一人芝居(この時は父親の介護)の方が圧倒的にリアルで、おそらく谷山さんの中で、本当に苦しい部分、辛いことは、この作品の中で大きく出さずにいくという判断があったんだろうなと思います。

昨年の姉妹劇団からくり劇場の、国歌斉唱における教育現場の混乱を描いた「歌わせたい男たち」も、当時の社会問題を描いた作品ですが、戯曲の中に、受け手によっていかようにも取れるような余白がありました。
また、今年の演劇祭のシアホリ「プールのある家」は、やはり社会の底辺で懸命に生きる人の輝きが、あまりに酷い実態と合わせて描かれていました。
この2作、そして現実の事件の悲しさと比較すると、谷山さんの考え・想いを、終演後の挨拶で言われた言葉と同じくらい作品で感じたかったです。

役者陣は皆さん素晴らしかった。
まるみさんのコミカルさが作品を柔らかくした大きな要素かな。
また、YUKIさん、ユリカさんのパートの暖かさも素敵でした。
リフレインを上手く使ったエンディングの魅せ方は、これぞ谷山節でしたね。
残りの4公演、頑張ってください!