大駱駝艦・田村一行舞踏公演「ジョン万流離譚」(2021.03.21)

土佐清水文化会館にて、大駱駝艦・田村一行舞踏公演「ジョン万流離譚」を観てきましたよ。
田村一行さんは2015年(薔薇とお接待)と2017年(土佐の山間より出づる)にかるぽーとで作品を発表いただいてまして、その時の熱いご縁が土佐清水に拡がったこと、なんとも嬉しい限りです。

ちなみに過去の高知公演も今回も、地域創造のダンス活性化事業という枠組みでの公演となりまして、このダン活、いわゆるカンパニーを迎えて上演する形ではなく、同行する出演者やスタッフの数、滞在日数などの制限があります。
その制限ギリギリを毎回突いてくる一行さん。
今回も限られた時間の中、ホールスタッフの皆さん、そして舞台監督で入られた出口さんと濃密なクリエイションをされたのがヒシヒシと伝わる作品でした。

一行さんのクリエイションの、相手を信頼し委ねる度胸と、それに食らいつくホールの皆さんという図式。
美しい。
これこそが文化施設の自主事業のあるべき形だ。
それを実現する、柿谷さんという気概を持った熱い担当者がいる土佐清水文化会館、えいホールじゃ。
ホールスタッフの皆さんにとっても、作品の中身にガッチリ関わって、ドキドキのオペをした今回は、もの凄い経験になったと思います。

作品のモチーフはジョン万次郎。
冒頭の嵐のシーン、緞帳に描かれた荒波を行く船が印象的な場面から、緞帳が上がった舞台の美しさには息を呑みました。プロセミアム形式の舞台だからこそ出せる「絵の美しさ」は確実にあると思います。

ひとり人間の人生をダンスで表現するというのは、かなり難しいもので、そして舞踏の公演を土佐清水で行うことも、おそらくはじめての機会だと思います。
そういうこともあって、一行さんは「分かりやすさ」を軸に創作されたように感じました。
綱を使った動き、吊り上げられる演出(余談ですがバトンの動きから「手引きや!危ない!」と客席で思ってたら、裏ではいろいろあったようです笑)、一行さん、塩谷さん、小田さんの3名(テクニカルスタッフとして名前が出ていた阿蘇さんもほぼ出演だと思いますが)が何役も演じながら展開され、そして意外なほど台詞を使った構成。
カンパニーメンバーに対しても、スタッフに対しても、できること、できないことの際まで攻めて、最終舞台上でその全てを引き受けて、ヒリヒリ感を楽しむような一行さん。かっこえいなぁ。惚れるなぁ。

また一行さんの作品が高知で生み出されることを期待しております。
みなさま、ありがとうございました!