カラクリシアター「さすらいのキャリー」(2022.04.22)

昨日は県立美術館ホールにて、カラクリシアター「さすらいのキャリー」を観てきましたよ。
カラクリシアターさんは2019年「永遠のイノセント」以来3年ぶりの公演。
3年前は蛸蔵で120席を越える座席組みをして、全5ステージ・600席を完売するという驚異の動員で、「もう美術館ホールでやったらいいんじゃないでしょうかねー」なんて話を主宰の谷山さんとしていたのが、このコロナの世の中で、お客さまをギュウギュウに詰め込む小劇場スタイルができなくなり、カラクリシアター的には否が応でもホール公演を選択することになりました。

美術館ホールの座席数は399席。機材席や見切れ席、感染予防のため最前列を潰して、おそらく300強の座席数での3ステージに挑んだカラクリシアター。僕が観たのは初日の公演でしたが、まさかの超満員!
両隣の座席の人に触れないよう、身を狭めての観劇もいつ以来だろう?客席の熱と舞台の熱が混じり合うこの感じこそ、演劇公演の醍醐味だなーと思った次第です。

会場が蛸蔵から美術館ホールに変わることで、舞台も大きく変わります。
純粋な舞台の広さが何倍にもなること、袖の空間を持てること、高さも大きく違う。
それらを効果的に使った舞台美術は見事で、しっかりホールの舞台に映えるものでした。
さらに驚きは物語の大事な部分を担う軽トラ。チラシのビジュアルとそこに書かれたあらすじを読む段階で「軽トラをどうやって描くのかなー」と思ってたら、まさかそのまま出すなんてw。
ちなみに消防法の関係で劇場にガソリンを持ち込むことは厳禁で、車を劇場に入れるにあたっては、実際にエンジンをかけなくても、燃料タンクに少しでもガソリンがあるとNGなのです。
じゃあ、どうしたかと言うと、おそらく駆動部分を取り外し、車内の台詞が聞こえるようフロントガラスも外して、動かす際は人力エンジンやろうなー。
この加工ができたのはきっと谷山さんの本業のなせる技ですが、なにより以前と比較して大きく膨らんだであろう会場使用料や舞台にかかる費用を、チケット収入で賄う劇団運営の凄さです。この面だけでもカラクリシアターは高知イチの劇団と言えるんじゃないかしら。

物語は、旅人・谷山さんの半生がうっすらと浮かぶようなようなロードムービー仕立てでした。
家族の絆、出会った仲間、憎めない敵役、特殊効果担当の川島さんw。
人間賛歌というか、人生賛歌というか、諦めず粘り強く進むことの大切さを真っ直ぐに表現することで、このコロナの状況の中の、ご自身や劇団や高知の演劇を鼓舞されようとしたのではないかと思います。

目標の場所に向かって進むという物語だと、場面をどう見せるかというのは演出の腕の見せ所ですが、前述の舞台美術(東尋坊がラストの祭壇?に変わったのはすごかった)に加えて映像を効果的に使っていました。
あと個人的には時間軸の描き方に唸ってしまいました。特にユリカさんの病室のシーン、現在から過去にすっと変わった瞬間「おおおお」と声が漏れましたよ。
出演の皆さんはみんなキラキラ輝いていましたが、その中でも下尾さん。今さらですが、上手いわぁ。すごいわぁ。

ブランクをものともせず、初のホール公演でさまざまなアイデアを詰め込み、創り上げた本作。劇場に入ってからの時間が限られる中、おそらくイメージした演出方法を実際に落とし込む部分に相当ウエイトがかかったのではないかと思いますし、その分を俳優の頑張りで補ったのが今回じゃないでしょうか。
終演後には来年4月の美術館ホール公演も発表されましたが、おそらく次回はさらに洗練された作品になるんじゃないかと期待しています。

カラクリシアターの底力をしっかり示して、復活の狼煙を盛大に上げた演劇祭KOCHI、今年は中内こもるさんやワラビーなど新しい高知の仲間も続々と登場しますので、大変楽しみにしております!
まずはカラクリのみなさん、ありがとうございました!