シスタービープ「距離8000万メートル」(2020.05.19)

昨日はシスタービープ「距離8000万メートル」のゲネプロを見学させてもらいました。
本番を観に行く予定だったのが、外せない仕事が入ってしまい、スタッフで入った前回に続いてのゲネ観劇となりましたが、今回は空間の緊張感や見え方の面など、思いがけず恵まれた観劇となりました。

前作に続き出演者は2名。ビープちゃんは現在、オカザキ君と吉川君の2名が所属しており、今回は客演に野村春菜さんを迎えての上演です。
会場は入明町にある、民家をリノベーションした施設「おうちスペースi」さんで、思うとビープちゃんは前作はバーを舞台にした作品を実際のバーで、今回は実際の家(なのか、ホテルなのか)を舞台にしており、場所や空間の持っているリアルな力を上手く利用されていますね。

さあ、作品につきまして。
前作はオカザキ君が自分の屋号を掲げての決意宣言とも取れるような、オカザキ君でしか書けない、オカザキ君の脳内で高速に展開されるであろうオカザキ節が全編にわたって炸裂し、観客を心地よい混乱に誘う感じだったのが、今回は一気に変わりました。

状況だったり大事なところを言葉にせず、観客の想像を煽っていく洗練された戯曲構成の中で、ここぞ!という所で打ち込まれるオカザキ節。そしてそれを体現する2名の役者。
戯曲を読み解いて演技プランを示すという当たり前のことに、どれだけ誠実に向き合えるか。今回の本と共演者に必死で食らいつく吉川君の姿にグッときました。
本の影響もあると思いますが、台詞に追われていた印象だった前回からしっかり歩を進めていました。とはいえ一朝一夕にはいかないのは当然ですが、それでも目指すべき道が浮かんできてるんじゃないかなー。
そしてのむはるさん、素晴らしかった。これまで一緒に創ったり、観てきた作品のいずれにもない、彼女の新しい一面が出た、強くて重い演技。
特に物語後半の台詞を受けるときの眼差しが素晴らしく、至近距離の空間も相まって、自分のいつかの恋(が終わる時)の記憶が呼び起こされるような感覚になってしまいました。お芝居、スゴイね。

物語は、なんというか、幸せになりたい不器用なニンゲンのいびつな関係を優しく描いたものでした。
タイトルの「距離8000万メートル」。ロマンティックね。この距離の意味は分からないままでしたが、きっと地面をなぞる距離ではなく、立木さんがデザインされたフライヤーのように、空へと続くようなイメージなのかしら。

自分と他者。自分と社会。自分と自分。
谷川俊太郎さんの「二十億光年の孤独」にある「万有引力とはひき合う孤独の力である」という言葉のような、寂しくて、けどなんだか暖かい観劇体験でした。

オカザキ君の戯曲の幅にも驚いたね。
次回も楽しみ、シスタービープ!