劇団シアターホリック「どこまでいっても死にたくない」(2023.05.21)

昨日は蛸蔵にて、劇団シアターホリック「どこまでいっても死にたくない」を観劇してきましたよ。
シアホリーズ(松島さん、紫織さん)が超強力ゲスト・加藤春菜さんを迎えての、3人のキャストでの上演です。
作品テーマはなんと戦争。憲法が改定され、自衛隊が日本軍となった近未来の日本が舞台。
物語の軸としてはシアホリらしくない、新劇のような(僕の解釈が間違ってたらごめんなさい)ドストレートなもので、それをシアホリらしい、3人の俳優が何役も演じ分けながら場面がどんどん変わっていく、ポップな演出で進行するというものでした。

お父さんはずっと単身赴任の家庭で、引きこもりのお兄さんと、県立大学に通う弟と、お母さんの3人がメインの登場人物。
就活に悩み、政治を自分ごとにしない友だちにうんざりし、日本軍に志願する弟と、それを聞いて慌てたお母さんがyoutubeのネトウヨ動画を見て愛国活動に励むようになるというもの。

ことごとく選択を間違えて、どん底に落ちていくというお話なら、以前松島さんが一人芝居で上演された「孤独」にも通じるものがあるのですが、この愛国お母さんの選択と関係なく、どんどん戦争に進んでいく国を止めようがないという事実と、物語中盤でお兄ちゃんがお母さんに言った「日本は戦争をしない国だったんだよ、その憲法を変えてしまったのは僕たちなんだよ」という台詞、それを受けて「何を言っているのか分からない」と狼狽するお母さんの場面は、決してなんちゃってじゃないんじゃないだろうか。

インターネットやSNSの付き合い方がわからない高齢者がどんどん洗脳されてネトウヨになるという話や、愛国太郎のyoutubeチャンネル、物価高が進んで食事すらままならない暮らし、竹やりのようなドローン撃退法、そしてJアラート、マスコミを取り込んだ情報規制という、現実と冗談が混ざりあった、いや冗談が全て現実になりうる、薄ら寒い物語の展開。

最終、日本は空爆を受けて降伏し、新国家となるというエンディングで、その新国家では日本語は第2言語となり、会話は認めるが読み書きは禁じるという、かつて近隣国に対して日本がしたことがそのまま返って来るというところまで戯曲に盛り込んだ松島さん。

わりとシニカルに物事を描く印象だった松島さんが、ダイレクトに「戦争反対」を掲げたことは相当意外で、この裏側にもなにかあるんだろうか…なんて思ったのは考えすぎかしら?
普段のシアホリだと、当日パンフに松島さんの思いを綴りまくった文章があるのですが、今回はそれもなく、この疑問も観た人に委ねるということなのかなー。

今作を一区切りとして、シアホリの創作は少しお休みするとのことですが、きっと何度も引退しては復帰するプロレスラーのように、すぐにシアホリの新作が出てくるんじゃないかと、この疑問の続きを待っていたいと思います。
面白かったし、胸に残った。
松島さんの女装が、はるなはんの腹話術が、しおりちゃんのカンフーアクション(?)が、脳内で自動再生されてます。
みなさん、ありがとうございました!