和紙プロジェクトvol.2「風の強い日に」(2016.08.27-28)

浜田あゆみさんと始めてお会いしたのは、確か2014年に上演した「あらし」の稽古場に見学に来られた時だと記憶してます(その10数年前に伊藤キムさんのWSでお会いしていたことが後日判明しましたが)。
その時に彼女をよく知っている領木さんから聞いた情報は「演劇の道を志して東京で頑張っていた」「ピースボートに乗ったり、本気の平和活動もしてる」といったところで、へー、若くてもしっかりした活動をされてるんだなーと感心したことでした。

その後、拠点を高知に戻し、精力的な活動を始めたあゆみさん。
一言で精力的と言いますが、自身が立ち上げるプロデュース公演や、うちや美術館主催の公共ホールの企画参加、各所での積極的なワークショップの開催など、その熱量と立ち上げる企画本数、参加数は、文化事業の制作で飯を食っている人間をも凌駕しているんじゃないかーと思うほどです。

特に自身が企画制作を行う公演は、いつだって金銭面や動員面のリスクがつきまとい、1公演を立ち上げて無事終わらすには、とんでもない心労を伴うのですが、それでも彼女は休むことなく、次の企画も同時進行で進めながら突っ走ります。
さらに彼女の本分は表現者なので、発表する作品そのものに対しても全力を注ぎ込んでいます。

表現を自身の進む道と真剣に捉え、作品もそれぞれの課題や目的の下に発表し続ける。こんな人材が今高知にいて、彼女の存在が周辺の演劇人やダンサー、あと文化行政に関わる人間になにかしらの影響を与えることは、実は高知の文化芸術にとってすごいことなんじゃないでしょうか?

今週末に蛸蔵で開催される和紙プロジェクトvol.2「風の強い日に」は参加するアーティストや関わるスタッフも、彼女の何かしらのエネルギーを受けて、なんというか、いい感じにとがってます。
どんな本番になるか、今から楽しみです。例によってチケットのご用命承ります(いつでもここに辿り着くわたしの文章)。


「風の強い日に」盛況の内に初日が開けました。
和紙プロジェクトの去年の公演はちょうど手術やらで観ることが出来ず、今回スタッフで関わりながらも初見の感想文です。

和紙+舞台芸術というコンセプトはなんと言いましょうか、「自然を大切にしよう」とか「環境を守ろう」みたいなともすればお説教的な雰囲気がするのかしら…という不安がありましたが、今回の作品の根っこは、土佐和紙の製紙会社を営む家庭で生まれ育ったあゆみさんという人間を軸に作られた作品でした。その上で、舞台美術に土佐和紙を使用していて、非常に印象的な場面も作り出しているのも見所のひとつです。

あゆみさんについては数日前の投稿でも褒めちぎったのでその辺は省略しますが、まー、なんというかピュアでまっすぐな女性です。彼女が生まれ育った環境やエピソードを中心に、その中で生きること、暮らすこと、愛情やディスコミュニケーションといった、言い方は悪いですがダンスの素材に適してる箇所をうまく作品に消化しています。

若くてしなやかで、その才能をガンガン発揮する振付・演出の鈴木竜さん、高知代表のダンサーとして参加した、山本かなこさん(僕が高知で一番好きなダンサー!)と高松で精力的な活動をされる金崎さん、そしてあゆみさん。
僕がダンス公演を観る上で肝だと思う「感情の爆発」「極限の身体性」このふたつを見事に体現するキャストと構成でした。
モノローグ、ぶつけ合う言葉の掛け合いと、身体だけで表現するパートのバランスの良さも素晴らしい。
このクオリティーの作品を高知発としてしれって作ってることが、もう、なんというか、ものすごいことだと思います。

まだ明日の昼夜と公演がありますので、もしお時間ある方は蛸蔵に遊びに来てくださいね。絶対に損はさせません!

ほんで以下は自分のこと。
去年に続いての手術、現場としては4月のシアタコ民衆の敵(途中離脱)、オペとしては3月のラボ2以来というブランク。
現場に入って最初に痛感したのは、想像以上の自分の体力の落ち方。
さらにそれよりも、この仕事をしていく中で何よりも大事な「勘」と「察する力」の衰え。
仕事の関係で現場に合流するのが一番遅れてしまったのですが、それでも現場打ち合わせ、テクリハ、返し、ゲネになっても、演出家の意図を全て把握しきれていないという最悪の状態でした。
結果的にそこで膿を出し切れて、本番になんとか間に合ったのでしたが、ゲネ終了後は竜さんに対してはもちろんのこと、今回僕に声をかけてくれたあゆみさんや、出演者・スタッフの皆さんに対して、どうしよう…というくらいまで追い込まれました。

いやあ、間に合って良かった。
って安心したら明日なんかやらかす可能性が高まるんで、きっと今の時点では100点の今晩の本番以上のオペをやるので、どうか皆さん観に来てくださいね。

ありそうで案外珍しい、領木さん、日野さん、あたしの40オーバートリオがお待ちしてます!