ナショナル・シアター・ライヴ「夜中に犬に起こった奇妙な事件」(2017.07.08)

昨夜は県民文化ホールにて、ナショナル・シアター・ライヴ「夜中に犬に起こった奇妙な事件」を見てきましたよ。
演劇界最高峰と称されるイギリスのナショナルシアターの公演を臨場感そのままに上映する本企画。
ここ数年の県民文化ホールの事業展開の素晴らしさをそのまま現しているような攻めた企画です。
県文・濱口さん、シネマ四国・田辺さん宇賀さんに大きな拍手を贈ります。
高知にこんな公共ホールがあってホントによかった。

そしてその作品についての感想なんですが…。
内容があまりに素晴らしすぎて…。
もういっそ心を閉ざして、誰にも会わずに布団の中で泣きながらグズグズずーっと作品のことを考えていたい…。くらいの感動でした。

自閉症と称される少年、クリストファーの視点で描かれる、一つの事件。
「多様性を認めようよ」「障害を持つ人への理解を深めようよ」みたいな(うんこみたいな)上から目線ではなく、彼の視点で描かれる世界。

その、リアルさ。
彼が生きる世界の難しさ。

そして周囲の愛情。
一番の理解者であるだろう学校の先生の導き方に涙し、近所の方達、初めての旅で遭遇する方達との短いやり取りも心打たれます。

そのうえで、一番やられたのは、彼の両親の愛情です。
それぞれに不器用で、人生に苦しみながらも生きていく姿に…。もう、なんだか…。
未熟な父親としての自分を重ねてしまい、胸が締め付けられました。

想いを伝えることの大切さ。
想いを受け止めることの大切さ。

世界は、宇宙は、愛でできているんだなー。
はぁ。

…。

グズグズ言ってばかりもいけないので、違う視点から見ると、舞台構成・演出の洗練さは目を見張るものがありました。
予算規模もテクニカル面も含めて簡単に比べることもできない世界規模の劇場だけど、それでも高知の演劇に取り込めるものもあるんじゃないかなって思えることがいくつかありました。

だからこそ、みんなに見て欲しかったなぁ。

この企画を続けていくには当然動員面での成果が必要な訳で、多くの演劇人が刺激を受ける機会を維持していくためにも、もっともっと多くの人に関心を持ってもらいたいものです。

愛情の反対は無関心だと思うのよ。

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追記。
ウソをつけない、比喩を理解できない、空気を読めないクリストファー、なぜか自分を照らし合わせて観ていました。
生きやすい世の中って、いったいなんだろうな。
少なくとも今は決して生きやすいとは思えないことばかりだな。

愚痴や不平を言うのは誰でもできる。
そこから良くしていくためにどうしたらいいか。
知識だけじゃなく「違う世界を知る」ことが一歩かも知れないな。