シアターTACOGURA「ブレーメンの音楽隊」(2017.12.15)

遅くなってしまいましたが先週末のアートゾーン藁工倉庫の感想文。
まずはシアターTACOGURA「ブレーメンの音楽隊」につきまして。

旗揚げ年から行っているこども向け公演は今回で4回目となりました。
回数を重ねるごとにしっかり集客をし、今回は前売り段階で全公演完売という、素晴らしい結果に!
手売りによる動員も大事ですが、こうやって新しい客層を獲得できるよう動くこともホントに大事なことですね。
言うは易し、けどこれを継続していることだけでも、シアタコが高知で唯一無二の劇団と言えるのではないでしょうかね。

演目の「ブレーメンの音楽隊」は昨年に続いて2度目で、出演者は一部入れ替わったものの、ハナカタマサキさんの作曲した音楽もそのままで、基本昨年をベースにブラッシュアップしたものかと思いきや、全く違う作品となっていました。

老人ホームのクリスマス会を見に来てくれる孫のために、「ブレーメン」を上演しようと練習するおじいさん、おばあさん。そのブレーメン自体も、今の社会にうまくフィットできなくなった「使えない」サラリーマンやドロップアウトせざるを得なかった人たちを登場人物として描いており「そう来たか!」という思いと「どう帰着させるのか?」とワクワクしながら見させてもらいました。

社会の流れに置いてけぼりを食らう人の描写はコミカルだけど本質を捉えており、さすがだなぁと思う一方で、演技面では自分が見たのが初回だからかも知れないけど、全体が慌てていて、台詞自体のテンポがあれ?と思ったことがひとつ。あと、昨年のブレーメンの感想文にも書いたのですが、歌が本公演の中心になるなら、もっと練習が必要じゃないのかなー。昨年はいろいろ時間が追いつかなかったのは分かるけど、今年はすでに曲があるのだから、歌パートだけでも時間をかけてしっかり練習できていれば、印象もかなり違ったんじゃないかなー。
全国を回る児童劇団はもちろんのこと、高知でも「歌」で表現する劇団は当然のようにしっかり練習して発表するので、今回はそこが悪い方向に目立った印象です。もったいない。

お話の帰着は、ちょっと性急な印象でしたね。劇中劇のブレーメンのラスト部分と、本編のエンディングまで一気に駆け抜けたのは、全体のランタイムを考えて詰めたのだとは思うけど、そこを丁寧に描けば、今回の作品を通して伝えたいメッセージが明確に見えたのかも知れません。

最後に、こども向け公演と、本公演の違いはいったい何だろう?
劇中劇のスタイルや社会からはみ出してしまう人の描写は、公演対象の小さなお子さんには少し難しかったかも知れませんが、まだそこはいいと思います。演劇で知らない世界を知る楽しさだってあると思うし、こどもの理解力って実は相当なものだし。
ただ、いわゆる社会的弱者を取り上げて、こども達(大人もそうか)にどういうメッセージを送りたかったのか?
この部分がもう少し明確だったら、作品の印象はガラッと変わったかなーと思った次第です。

ひとつのフォーマットで精度を上げていくのも大事だし、シアタコのようにどんどん新しいことにチャレンジしていくのも勇気のいることだと思います。新しいことの中にもきっとシアタコの取り組むテーマが存在しているはずなので、今後の活動も楽しみにしていますよー。