劇団彩鬼「烏焔の城」(2018.09.14)
昨日は蛸蔵にて、劇団彩鬼「烏焔の城」を見てきましたよ。例によって感想文ですが、ネタバレ含みますので、観劇予定の方はご注意くださいませ。
昨年の「鬼被威」から1年ぶりの本公演。
その前が3年ほど開いていたので、これくらいのスパンの方が劇団としての体力や質の向上になるよなーというのが通常の感想。そしてきっとこの上演のタイミングは、なんとかして前田澄子という演劇人を今回の舞台に立たせるために、恵那さん達が頑張った結果なのだろうなーとも思いました。
昨年の「鬼被威」は、すみこが役者として最後に立った舞台。
そしてすみこの俳優としての新しい1面が生まれた素晴らしい作品でした。
今回の「烏焔の城」。
ある骨董品店を訪れた青年が過去にタイムスリップし、そこで出会った、非業の死を遂げる運命を持つヒロインを救おうと奮闘するというお話です。
途中何度も繰り返される「死」という運命になんとか抗おうとする登場人物。
「命を燃やし、いまこの瞬間を生きることが、どれだけ大切か」と語りかける恵那さん。
舞台を作る全員が、この舞台に立とうと必死に生きたすみこの人生を受け止めて、いろんな想いを注ぎ込んだ作品だったんだと思います。
物語の後半は、仲間の力を借りて謎を解き明かし、エンディングに向かう流れだったのですが、丁寧な伏線回収は心地よかったものの、謎解き部分が「ほー。なるほどー」と感心する感じだったので、もし可能だったら客席も共感していけるような作りだったらなおよかったかなー。あと、個人的には前回の「鬼被威」のように、お客さんが作者の思想を想像するような「余白」がある方が好みでした。
ふたつの城の見せ方や、各場面の見せ方はさらに洗練され、時間軸や場面がとっちらかることなく、スッと入っていけました。丁寧な演出と照明、そして音楽は見事でした。
出演陣で強く印象に残ったのはオプティさん。当たり前の話ですが「役を作る」集中力と身体が素晴らしかったです。
まおさんの指先までピンと意識が張り詰めている所作の美しさも素敵でした。普段の彩鬼の公演だったら、ラストはもっとド派手な演出をしそうでしたが、今回はあえてそこを抑えたのであろう鳳凰のシーン、綺麗だったー。
てんとう虫のおふたりと、かずやさんのやり取りの自然さからも、この座組みが非常に良い空気で稽古できたんだろうなーなんて思った次第です。
しかし…上手く言えないけど…不思議な観劇体験でした。
背景を知らずともちゃんと楽しめる作品なのに、舞台を見ながら、物語の世界に入りながら、すみこの姿を重ねたり、彼女へのメッセージや、見送った人間へのメッセージを感じたり…。
想いを紡いで歩んでいかねば。
ふひー、たいへんじゃ。
けど、笑われんように、呆れられんように、僕もがんばるよ。
皆さん、あと2ステージ、ふぁいとー!!