極東退屈道場「808ダイエット」(2018.11.10)
本日は伊丹アイホールにて、極東退屈道場「808ダイエット」を観てきましたよ。例によって感想文。
林さんの作品は、「PORTAL」(2016年かるぽーと)、「心は清経」(2017年山本能楽堂)、「ファントム」(2017年アイホール)についで今回4作品目。観る順番も、(クレジット的には)脚本、企画、そして自身の劇団の本公演となっていて、林さんの作品への向かい方もしっかり分かって臨んだ今回でした。
ホールに入ると、これまで「PORTAL」「ファントム」で度肝を抜かされた舞台美術とは打って変わってシンプルな、大きな橋が鎮座する舞台。これは作品タイトルに由来する大阪八百八橋という、かつて大阪に無数に流れていた川(現在は大半が埋め立てられ、現存する川の上には阪神高速環状線がかかっている)に架かっていた無数の橋をそのまま表していることが分かります。
もうひとつの「ダイエット」という言葉も、オープニングからすぐにこの界隈をダイエットのためにジョギングする前田さんの独白で明確にしています。
なんだか、意外だ。
これまでの林さん作品で感じていた、観客ひとりひとりが作品タイトルを手がかりに、物語の中をそれぞれ彷徨っていくようなイメージだったのが、全く違うアプローチになっている。
林さんの作品の肝だと思う「街」と「現在」と「ノスタルジー」の切り取り方(視点)の切れ味はそのまま、街に暮らす人々の時間軸を前後させながら、反復しながら作っていく構成。
冒頭で響いた台詞が、物語中盤で別の響き方をする不思議さ。
中でも「街の境界線」「またぐ」「ねじれる」という言葉のドキドキ感はなかったです。
川から身を投げようとする若い女性の描き方もまた演劇的なのにやけにリアルで、彼女の言葉が今回一番響いたなー。
ただ、前作「ファントム」では、彼女と同じくらいに台詞が響いた登場人物がたくさんいて、そんなバラバラの登場人物たちがそれぞれの世界や時間を紡ぎながら物語を推し進めていた印象だったのですが、今回はそこが上手く読み取れず、時間にして数日動いたであろう彼ら彼女らの日常そのままを切り取った形(たまに脳内暴走も出してるけど)で、あえて劇的な進行にしなかったのは何故だろう?
ある意味誠実な作り方とは言えるのですが、なんだか作家の意図を上手く読み込められず、アレコレ考えながらの帰り道となりました。
疑問と言えば、後藤さんのマネキンは、ビッグイシューの売り上げから貯金してもらったお金を使って、彼女に関わる人にビッグイシューを買いに行かせたのは何故だろう?それを彼は疑問に感じたのか、どうなのか。
循環というのもひとつのキーワードだったのかなー。
うーむ、もう一回観たらまた違う感じ方になりそうだ…。
こうやって作品について考えて、あれこれ感想を言い合える時間はありがたいことですな。
なにより、この舞台を全力で走り回った(そのままの意味です)前田さん、ホントにお疲れさまでした。身体のケアが心配ですが、どうかどうかお怪我のないようにしてくださいねー。
みなさんも、千秋楽まで走り抜けてください!