シャカ力「凄ロック」(2019.05.11)
さあ、演劇祭KOCHI2019開幕!
トップバッターは、シャカ力「凄ロック」!
ということで感想文!
一言でいうと、劇団の魅力と行正さんの戯曲がガチッとはまった快作でした。
身体的にも力量的にも、高知のトップどころの俳優が揃っているシャカ力。長いキャリアで役者同士の関係が成熟しているから、どんな形にも持っていける強さと安定感(さらに今回唯一のヤング・中野コナンくんの頑張りが、ベテラン勢との良い効果を生んでましたな)。そこに絡んでくる行正さんの「開くと閉じる」が表裏一体の、良い意味での不安定な戯曲。
演出的にはこれまであまり表に出ない印象だったのですが、今回の導入部分は上手だったなー。
何人かのお客さんに手伝ってもらって、スクリーンの指示に従いお題を進めるという形をそのまま本編に持っていくという流れはお見事でした。
寝ている間になぜか大きなサイコロの中に入っていた井上さん、はるなさん、コナンくんの3人きょうだいと、もうひとり行正さん。
序盤は「馴染めない」「わかり合えない」「息苦しい」という、おそらく行正作品の根底に流れているであろうテーマをモチーフにしながらも、それ以上の陽のキャラクターで不可思議な世界を遊び倒します。さらに昌子さんがお母さんとしてこの輪に入ってきてからのカオティックな感じは最高でした。
お題をクリアすると、サイコロを振って、新たなお題が出てくる。
そのお題の内容は突拍子もないところからはじまって、少しずつ「家族」というテーマにフォーカスしていきます。
父親不在。
父親を演じるということ、家族を演じるということ。
「お父さんなんか、大嫌い!」
はるなさんの台詞ひとつで舞台の空気を変えた瞬間が、シャカ力という劇団のポテンシャルを表しているようでした。
そうやって少しずつ、ぎこちないながら家族の関係が生まれ、育っていった先の「あがり」という結末。
サイコロを何回転がしても「3」の目しか出なかった理由は何だろう?
一度だけ出た「4」という数字が死をイメージするというのは分かるけど「3」という数字に何が込められていたんだろう?
時間は誰にでも均等に進んでいくということだったのかなー。
「あがり」の、あまりに乱暴な別れ方は、ドラマ的要素を排除した現実そのもののようで、そして反対にドラマ的要素を無理矢理入れ込んだように感じた、エンディングの残された家族の再生の違和感。
整合性が取れてなくても気にしない、力業の進め方は心地よかったのですが、最後にいろんな謎かけをして、スタンダード“風”な形で終わらせたのは、観客それぞれに正解の無いものを考えさせるということだったのかなー。
こんな風にモヤモヤを反芻するのは個人的には好物なのですが、オープニングの暗転でセットの巨大サイコロの裏明かりが漏れて、スクリーンに何かのシルエットがはっきり出てたので、このシルエットの正体を物語の最後で明らかにするのかなー、サイコロの裏側を見せるのかなーと思いきや、一切触れられなかったことは軽く衝撃でしたw。
一方、暗幕で囲わず、基本舞台も組まず、蛸蔵の素の空間を不条理な世界に染めたのは、さすがだなーとも思ったり。
いろいろ含めて、行正ワールドの新しい一面が見えた作品でしたな。
この世界がさらにどう転がっていくのか(上手いこと言った)、これからの作品も期待してまーす!!