ふたりっこプロデュース「第1回わ(た)しフェスティバル」(2019.05.31)
演劇祭KOCHI2019、3組目はふたりっこプロデュース「第1回わ(た)しフェスティバル」でしたよ。
個人で「和紙プロジェクト」という企画を立ち上げて、それを続けていくという覚悟と根性だけで、僕はあゆみちゃんを尊敬してますが、その企画も同じことをルーティンでやるのではなく、都度新しいチャレンジをしてること、ホントに偉い!
今年の和紙プロジェクトは、昨年リサーチした内容を基にクリエイションを行い、試作の発表をいの町で行い、来年度に完成した作品を美術館との共催で発表、さらにシンガポールでの上演に向けて現在頑張っている最中とのことです。
そして今回の公演は、現在進行中の和紙プロジェクトのクリエイションメンバーの中から、立本夏山さん、あゆみちゃん、井上貴子さん3人の一人芝居オムニバス公演という形式でした。さあ感想。
1本目 立本夏山「海のオード」
昨年の演劇祭に続いて参加の立本さん。声の美しさ、身体の強さとしなやかさ、裸電球を使った魅せ方、いずれも昨年同様にすばらしかったですが、作品としては昨年の「智恵子抄」の静寂と熱情の対比の素晴らしさが際立っていて、今回は一本調子に感じてしまいました。
テーマの海、船乗り、海賊、生死感といったイメージをお客さんの中に浮かべるためのキーワードの繰り返し方もさすがと思ったものの、出力120%の場面と1〜2%の場面が上手くあったら両方が引き立つように思った次第です。
ちなみにあの裸電球の照明、日野さんに聞いたところ、シーンメモリーを組まずにライブで、アドリブでやっているそうで、スタッフを信じられるからこそできるんだろうなー。
そして音響。途中に流れた4つ打ちの音楽の音量よ。きっと過去最大の音量であっただろう。客席は「おおお!」と思ったけど、一方で防音ができてない蛸蔵のご近所さまの顔が浮かんで、おじさんヒヤヒヤでした。
2本目 浜田あゆみ「歯イタおばさん」
あゆみちゃんのこの作品は、高知に戻られてから何度か上演されてるのですが、個人的にははじめての観劇となりました。
ピアニストの疋田ありささんの演奏と歌を上手く使い、客席とも掛け合いながらのパフォーマンス。おそらく作品の対象はお子さんがメインだと思うけど、それでもこの作品を持ってきたこと、いろいろ内情を考えてしまいましたな。
作品的には、おばあさんの人形を扱う時の表情と、少年の役を演じる時のメリハリがあればなー。
あと、ボーカルレッスンの成果が発揮された歌パートだったのですが、ピアノの疋田さんもいっしょに歌われるのなら、二人で主旋律を歌うのではなくてハーモニーが取れたらよいのになー。最後にみんなに歌ってもらうための主旋律オンリーだったのだとしたら、大人がメインの客席にどういうアプローチが必要だったのだろうか?
3本目 井上貴子「お兄ちゃんの樹」
(いきなり余談。劇団双数姉妹に所属されていたのか!と帰ってパンフを開いてビックリしたことです。)
作品はある家族の庭に植えられた1本の樹を井上さんが演じる一人語りのスタイルで、オープニングで立ち上がってから、カーテンコールまで一切足を動かさなかった役者魂と、立本さんとはまた違った声の響きに感心した次第です。
ただお話的には、エンディングが冗長気味に感じたなー。
井上さんの作品だけでなく、全体通じて客席が集中力に欠けたように感じたのは理由があると思います。
オムニバスとはいえ、全体の構成を考えて、詰めたりする箇所も必要だったんじゃないかな。
何よりも和紙を使った大きな樹のように見える大作のオブジェが、3人の作品でほとんど使われることがなかった(立本さんがそこに入ったり隠れたりしたくらいだったかな)のはもったいないし、あのオブジェが、作品によってどう見えるか?見せるか?って提案し合ったり、それぞれの作品に影響を与え合ったりできる時間があれば良かったのかなーと思ったことです。
和紙プロジェクトの新作の制作にかかる比重と、それぞれのレパートリーを並べて演劇祭に組み入れる作り方。
片手間でやっている訳では無いだろうけど、おそらくこの作品に熱量を全て注ぐのならば、また違ってたのじゃないかな。
という、ちょっと残念な感想になっちゃいました。