蛸蔵ラボvol.6(2019.10.19-20)

蛸蔵ラボvol.6、無事終了しました。
思い返すと蛸蔵ラボは5年前、自分がかるぽーとの事業担当から外れた年に領木さん・吉良さんから相談を受けて(不憫に思われたとも言う)、そのお話の中で「スキルアップと交流」「演劇実験空間」ってキーワードが生まれてスタートした、ある意味自分の軸足を蛸蔵に置く機会になった、思い出深い企画なのです。

「劇団を立ち上げて本公演を打つのが難しい方に発表の場を作ること。」
「学業や就職、家庭の都合で演劇を離れていた方が戻ってこられる場所。」
「みんなが作品制作を通じて学び会える場所。」
「県内・県外の演劇を愛する方と交流できる機会。」
企画の立ち上げから、しっかり目標があることは大切なことだなーと、今さらながら思ったりします。

多い時には2日で上演できる限界(10団体)を超える申し込みがあって、運営チーム「蛸蔵ラボ5人衆」でうんうんと出演団体を選考した時もあるのですが、基本ラボは公募なので、毎回ドキドキしながら申し込みが来るのを待ちます。
今回は、これまでで一番少ない6団体の申し込みとなりました。
申し込みの数でもドキドキするし、作品の内容もお任せなので、果たしてお客さまに喜んでもらえるかも毎回ドキドキなのですが、フタを開けたら今回も素敵な作品が並んでいましたよー。
ということで、さらりと感想。

劇団とも子「お茶のしあわせ」
蛸蔵ラボに3年連続で参加するキングオブ高知の怪優・敬三さん。
過去2回はなんとも形容しがたい、敬三さんの脳内を表現した衝撃作だったのですが、今回は茶道をテーマにした会話劇。
この振れ幅も相当ですし、静かな戯曲の作風と真逆の、狂気をはらんだかのようなみぽりんとのギラギラしたかけ合いは、やはり「劇団とも子ここにあり!」でしたね。
リハーサル時の、調整室の爆笑大賞を今回も贈呈いたしますw

Shima Tori「半径0メートルの戦争」
高知の大学に進学して、TRY-ANGLEに入団した、とびーこと石飛さんと、大学で出会った大西さんによるヤングなユニットです。
昨年の高知大さんにも通じる、若者の生き辛さを丁寧に表現していました。
10代の頃って、当人にとっては学校と家庭しかない、逃げ場のない、ある意味人生の中で一番しんどい時期かも知れない。
けどその苦しみを、もう一人の自分と対峙することで前に進もうとする劇中の登場人物と、実際に舞台に立って、この息苦しさを演劇で表現しようと頑張る2人が何かしらリンクして見えた次第です。若さって素晴らしい。

モザイクサーカス「夢の所有権」
高知工科大学演劇同好会「劇団ドラマティックタイム」のOBを中心としたユニットというので良いのかしら?
皆さん高知を離れて活動をされているけど、こうやって帰ってきてくれるのはなんとも嬉しい限りです。
作品は、ある劇団に作家志望で入ってきた若者と、劇団専属の作家とのやり取りを中心に展開されますが、劇中劇の振り切り方や、構成も力が入っていましたねー。
劇中で描かれた劇作についてのダメだしに、みんなの演劇愛をいっぱい感じました。
個人的には音響照明も劇団の方が来ると聞いてたところ、これまでのラボで縁深い大藤さんとすばる君が現れたのが(そしてすばるは永遠のモラトリアムを満喫してたのが)大サプライズでした。

高知大学演劇研究会「へそのお」
昨年くらいからかな。「みんなで楽しくやるのが一番」って感じから、少しずつ雰囲気が変わってきた高知大学演劇研究会。
取り上げる作品もハードな方向が多くなり、今回はシャカ力行正さんの作品に正面からぶつかっていきました。
衣裳も舞台美術も照明も音響も、みんなのアイデアをありったけ詰め込んで「どうよ!?」とお客さんに投げかけるこの姿に若者らしい清々しさを感じました。特に「音」に対するアプローチは面白かったし、チームで頑張ったんやろうなー。
その上で、この作品にぶつかった後、良かったところと思うようにできなかったところをしっかり洗い出して、これからどういう風に立ち上がって動き出すか、今後に超期待。

絵空事「ごみばこ」
蛸蔵ラボはバラバラの作品が集まるのにも関わらず、例えば過去には小道具に拳銃を使う団体が被りまくるなど、なぜか作品がリンクする現象があって、今回も「複数の人格」とか「倫理」って言葉とか、不思議と重なってましたねー。
さて田坂君が作演出、コナンとあらっきーが出演のこの作品。
右脳と左脳?複数の人格?
散らばった紙に書かれた記憶の断片。
一度ノックがあって様子を見に行った、恐らく彼らが宿っているであろう肉体。
(たぶん)肉体が寝ている時の脳内で行われるふたりのやり取りは、あえてハッキリした事象を見せない作り方で、自分を閉ざして引きこもることに至ったあらっきーという人格はどういう傷を負っていたのか、そしてその黒い紙切れをゴミ箱に捨てることで「外に出る(=表の人格となる?)」ことに至った心情の変化など、うーむ、台詞の中に明確なキーワードが無いのはそれで良いけれど、だったらなおさら言葉以外で丁寧に表現せんといかんかったかなー。
田坂君はこの作品で四国劇王に挑戦するので、そういう意味では今回の発表はみんなの声を聞ける良い機会になったのでは。がんばーれー!

オカザキケント「明美 season1」
敬三さんと同じく、リハーサルの調整室爆笑大賞をもぎ取ったオカザキ君。
彼が蛸蔵ラボにエントリーするのは意外だったのですが、「出るからにはしっかり爪痕を残すぜ」って野心をしっかり感じた好作品でした。
「演劇実験空間蛸蔵ラボボリュームシ(セ)ックスなら、AVも撮れる」と乗り込んだものの、実際はできなかったと、謝罪から入り、そこに至った経過、途中で客席にちらつく狐、そして「爪が伸びる」と、笑わせながら狂気を帯びていく一人語りのスタイルでしたが、自分は通し稽古、リハ、本番と3回見て、小ネタも含めた再現性の高さ(台詞もそう)に唸ってしまいました。入念な準備をしてこの舞台に向かったであろうオカザキ君のスマートさが光ってましたね。
課題を言うならば、分かりやすい前半と比較して、後半の爪のくだりは客席の熱が薄まった感じで、そこは舞台上からもっと狂気を出せたらなお良かったかなー。

以上、初日の大おきゃく、仕込みや本番・バラシ、打ち上げと交流しまくりの蛸蔵ラボでした。
来年は演会設立20周年、どんなラボになるのやら!
みなさま、お疲れさまでしたー!


公募により集まった県内の劇団やユニット、総勢6組による、交流とスキルアップ、そして演劇の可能性を追求することを目的に開催する2日間。
この実験空間で新たな才能の芽生えに立ち会うか?
さらなる舞台の進化を目にするのか?

■日時
10月19日(土)17:30open 18:00start
10月20日(日)13:30open 14:00start

■会場
蛸蔵
781-0074 高知市南金田28
https://www.tacogura.com

[料金]
公演日指定
一般前売り 1,500 円
学生前売り 1,000 円
(当日券は各 500 円増し)
※未就学児の入場はお断りします

[前売り券販売所]
かるぽーとミュージアムショップ/藁工ミュージアム KIOSK

[主催]
高知演劇ネットワーク演会

[協力]
NPO 蛸蔵

[お問い合わせ]
高知演劇ネットワーク演会(吉良)
080-3165-6889
tacogura.labo@gmail.com


19日(土)

劇団とも子「お茶のしあわせ」

作・演出
川島敬三

出演
みほり、川島敬三

団体紹介
劇団ラボへは、3回目の参加になります。よろしくおねがいします!

作品紹介
ここにいるだけで良いと感じる、そんなしあわせ。それを、おしえてくれる、おいしいお茶。お茶のしあわせ。

 

Shima Tori「半径0メートルの戦争」


岡田涼雅

演出
Shima Tori

出演
石飛遥奈・大西寧々

団体紹介
島根県と鳥取県出身の2人組。進学を期に高知へ。ひょんなことから、ユニットを組むことになり、蛸蔵ラボに参戦します。

作品紹介
「これは私と私の戦争なんだ。」私が私であるように。コンタクトと眼鏡でさまよい、今日も夢と現実の中で問答しよう。「だから、私は私が嫌いだ。」

 

モザイクサーカス「夢の所有権」


菱谷睦月

演出
タピ丘もちち

出演
血塗五六
村咲はにわ

団体紹介
垣根のない創作プラットホームを目指す創作活動チーム。演劇のほか、YouTubeでのラジオ配信、Kindle・文学フリマでの書籍出版など、前のめりに活動中。

作品紹介
ある一件により劇団から距離を取るようになった脚本家・武山の下へ、脚本志望の新入団員が押し掛けてきた。
渋々したアドバイスにも、振り回しながらも素直に応えてくる彼にかつての自分を重ねていく。


20日(日)

高知大学演劇研究会「へそのお」


行正忠義

演出
高知大学演劇研究会

出演
高知大学演劇研究会

団体紹介
蛸蔵ラボには団体として初めての参加となります。我々高知大学演劇研究会は、日々より良い舞台を創ることを目指して、練習に励んでいますが、実践の場が少ないこともあり、出場したいと考えました。部全体のスキルアップと経験が出来たらいいな、と思っています。よろしくお願いします!

作品紹介
産まれる前の赤ちゃんから繰り広げられる衝撃的な2人劇。一見何も考えてないように見える赤ちゃんが「トド!」「ギラファノコギリクワガタ!」「何それ!」シャカ力さんの戯曲を演研風にリアレンジ。若者の瑞々しい舞台をとくとご覧あれ!

 

絵空事「ごみばこ」

作・演出
田坂 涼

出演
中野コナン(シャカ力)
荒木 晶成(フリー)

団体紹介
自作脚本上演のための田坂の屋号。四国劇王Ⅵに参戦し予選突破、その後も継続した活動を考える。今回は中野に「出ませんか」と誘われたことをきっかけに、そのときたまたま隣にいた荒木を巻き込んで参加することに。

作品紹介
「ごみばこ」というのは、当て字で「護美箱」と書くそうです。ゴミを入れると周囲は美しく見えます。そしてそれは、自分自身の、心においても当てはまると思うのです。そんな「護美箱」を整理する話です。

 

オカザキケント「明美 season1」

演出・撮影
オカザキケント

出演者
明美

団体紹介
【オカザキケント】演劇公演に多数出演。近年では、『報われません、勝つまでは 土佐弁Ver.』(作・演出:田上豊)などに出演。中原中也記念館特別企画展「太宰治と中原中也」の関連イベント『お伽草紙「カチカチ山」』では脚本・演出を務めた。【明美】素人。

作品紹介
明美を撮ります。明美は交流します。スキルアップもします。しかし、明美を撮れるかどうかは分かりません。それは、「実験」という言葉に囚われ過ぎているからなのかも知れません。