からくり劇場「ザ・空気」(2019.11.15)
一昨日は蛸蔵にて、からくり劇場「ザ・空気」を観てきましたよ。例によって感想文。
からくり劇場さんは君が代斉唱問題を描いた昨年の「歌わせたい男たち」、今回の報道の自由をテーマにした作品と、社会問題を描いた作品が続きます。
老舗劇団がしっかり今の社会に警笛を鳴らす姿、とても頼もしく感じます。
物語はとある放送局(社員証の小道具、局名までは読めなかったけど、どうやらチャンネルは5らしい。確かにこういうテーマで頑張るのはテレ朝の印象ですな)。ニュース番組の特集に「報道の自由」を取り上げ、政権が放送内容に関与する可能性がある現在の制度は、報道の自由を脅かすものであるということを特集で訴えていこうとしたところ、放送当日になって内容に変更を求められるというものです。
ジャーナリストの使命を胸に、さまざまな圧力を必死に跳ね返そうとする現場の皆さんを描いた作品ですが、少ない登場人物で膨大な台詞量、さらに場面転換の段取りも多い中、感情の揺れを表現するのは一筋縄じゃいかないのかなーなんて思ったことでした。
きっと、登場人物全員の心情が場面場面で大きく揺れ動いているはずで、それこそがこの戯曲の一番の面白い部分じゃないかと思います。
そこをどこまで丁寧に描けたのか、いくつかの波のあとでどう感情が振り切れたのか…うーん…。
一番おおっ!と思ったのが、刈谷さんが演じる政権寄りのアンカー(責任を持ったキャスターという立場だそうです)の昔話で、彼が若かりし頃、ある政治家の番記者として入り、その政治家に心酔して、総理大臣にまで上り詰めたその政治家に自分を重ねて応援し続けた(そしてスクープがキッカケで総理の座を追われ、そのキッカケを作った弱小メディアを憎む)くだりは、そんな視点があったのかと(今のネトサポとかネトウヨと呼ばれる人を頭に浮かべながら)目から鱗でした。
終演後のあいさつで松田さんが話していたのですが、この戯曲が発表されたのは2017年、ちょうどモリカケ騒動や「忖度」という言葉が世を賑わせていた頃だそうで、なるほど、現場と経営者側の温度差がどんどん出てきていたまさにその時の作品だったんですね。
そして2年経って、世の中は果たしてどうなっているのか…。
物語のラストで描かれる世界に、現実も突き進んでいるんじゃないかなーということを改めて考える本作品でした。
考えるのをやめたら終わりやけん、いろんな角度からいろんな立場の人が考えて、意見を述べ合っていかんとね。
みなさん、お疲れさまでした!