劇団いちびり一家+南河内万歳一座☆オールスターズ「デタラメカニズム」(2019.12.05)
先日は一心寺シアターにて、劇団いちびり一家+南河内万歳一座☆オールスターズ「デタラメカニズム」を観てきましたよ。少し日が空いてしまいましたが、思い出し感想文。
万歳の旗揚げ40周年記念企画として、昨年の空晴に続いて行われた、いちびり一家との合同公演。
3劇団とも大好きな劇団ですが、空晴と比較して、大阪芸大で内藤さん、さっかんさんに教鞭を執った秋浜悟史先生の教えが根底に流れる皆さんならではの「しっくり来る感」。
万歳のみんなは「普段やらない歌や踊りにも挑戦しました!」と言ってましたがどうしてどうして。藤森暖生さんと藤田辰也さんのふたつの音楽が流れる舞台も、普段の乱暴なw振りとは違うダンスへの挑戦も、まるでひとつの劇団が新しいことに挑戦しているくらいに見えましたよ。
特に、このメンバーの中で唯一はじめて万歳の舞台に立つ石本さんへの「おまえ、本当に融通が利かないなー!」っていじり方ったらw。それを受ける石本さんの「なによ!」って表情ったらw。ああ、何を言いたいかというと、本当に兄妹みたいな劇団やなーってことです。
今回の作品は「デタラメカニズム」。内藤さんらしいというか、さっかんの作風にも通じるようなこのタイトル。
あるお屋敷に残された絶対に開かない金庫をモチーフに、記憶、過去、家族、恋人なんて言葉が散りばめられ、それらをこれでもか!と遊び倒していきます。
人生を変えようと、人生が変わる瞬間が見たいと、傍目にはバカな問答を繰り返す、この家の騒動に無関係な引っ越し作業員のありたつ(このありたつの存在は、初期万歳そのもののようでした)。
葬式にも来なかったくせに、遺産整理にやってきた吉井さん家族と、さっかん家族の醜いいがみ合い。
この家の奥さまの最期を看取ったお手伝いの和田さん(この主人公感ったら!)。
伝説の金庫破りの弟子として現れる新入りのマリーちゃん、若手のトンちゃんのキュートさ。
そして金庫破りの師匠が呼び寄せた、一癖も二癖もある登場人物たち。
全員に見せ場を作りながら、お話がだれないというのも凄いことだ。
物語は、どうやってこの金庫を開けるか、果たしてこの金庫を開けることができるのかという見せ方で観客をハラハラさせながら、少しずつ金庫に入っている中身について観客の想像を煽ります。
なぜ、この家の主人は誰も開けることができない金庫を作ったのだろう?
その中に彼はいったい何を入れたのだろう?
生きていく上で、伝えなければならない、残さないといけないことはある一方で、誰にも見せたくない、自分の心にだけしまった秘密というのは誰にでもあるんじゃないかと思います。
そんな「秘密」を観客それぞれの胸に想起させながら、さらにカルメンとオッハーラ(鴨さん、ことえさん)のミュージカル劇団が持ち込んでくる「劇作」のアプローチ。
もう、いい話でおしまいにすりゃいいのに、後半の「ここで無関係の貴方が重要なことを言うでしょう」とか「伏線を回収しやすくなりました」とか、「物語の中」と「物語を作る人間」という複数の視点を作ることで観客の頭を混乱させ、さらには金庫破りの師匠がいつの間にか劇団の師匠になって、書きかけの原稿用紙を手に出てくるバカバカしさ。そう、バカバカしさ!まさにデタラメだ!
最近の万歳は過去の名作再演シリーズが評判良かったのですが、新作としては個人的に久しぶりの会心の作品だったなー。
愛すべき舞台上のみんなに大笑いし、本来のテーマに胸を締め付けられ、え?え?と混乱し、ばっかだなーと呆れ笑いしながら全てが終わった後、帰り道に自分の心にしまった「秘密」が胸をチクチクするような、素晴らしい作品でした。
演劇ってステキ。
今日で大阪公演は千穐楽ですが、旅はまだまだ続きます。
みんなー!この後の東京公演もファイトやでー!!