劇団俳優座「北へんろ」(2021.01.19)

本日は県民文化ホールにて高知市民劇場例会、劇団俳優座「北へんろ」を観てきましたよ。
 
物語の舞台は2014年、岩手県の海岸にある古い旅館。
震災で壊滅的な被害を受けた地区だったけど、この旅館は奇跡的に損壊も無く、旅館を営む老夫婦はさまざまな事情を持った人を受け入れているというお話。
物語冒頭からうっすら描かれていた設定への疑問は、1幕が終わるまでにハッキリと台詞で説明をされていき、ここは、進む道を失った人や、行き場所を失った魂を受け入れている場所なんだなってことがわかります。
 
昭和8年の三陸地震でご主人を亡くし、戦争で息子を失い、息子の魂が帰る場所が分かるようにと旅館を続けた女将。
阪神淡路大震災で奥さんを失い、結婚の反対を押し切って岩手県に嫁いだ一人娘を東日本大震災で失い、弔いのために遍路旅をする男性。
熱心に原発反対運動を行う父に反発して原発誘致活動を行い、結果こどもたちを救えなかった女性教師。
 
このあまりにも出来過ぎな、詰め込み過ぎな背景と、戦死した息子が帰ってくるシーンは、個人的にはトゥーマッチすぎて「あ、こういうのが嫌で若い頃は演劇見ないようにしてたんや」って思い出すほどでした。
 
それよりも、物語の本筋ではないかも知れないけど、不倫関係だった男女の死の間際の場面や、その奥さんを探す男性の頼りない魂、酪農を営んでいた男性の放射能汚染対応への抗議の自死、それぞれが語る言葉は重いだけでなく、10年前の映像がハッキリと浮かぶほどリアルで、心を揺さぶられる場面でもありました。
 
そうよね。
みんなカッコよい人生ばかりじゃなく、いいことも悪いことも後ろめたいこともある日々が、一瞬で終わってしまったのよね。
あまりにも救いがない、物語では想像できないような現実を彼らや僕らは生きているんやな。
なんて、今の世の中を考えながらボヤボヤ帰った次第です。
 
そんな中、ひとつ救いだったのが、両親を失った少女・ジュンが歌う民謡でした。
歌には、踊りには、芝居には、鎮魂も、生きる者を奮い立たせる力もあるね。
せやせや、諦めずに僕も頑張るで。