おさらい会「海へ騎りゆく人びと」(2021.05.28)

普通にお客さんとして観劇予定だった、おさらい会のリーディング公演ですが、本番前夜に高知県の急激な感染状況の悪化を受け、延期という連絡がありました。
公立や民間、規模の大小といろんな催しがある中でのそれぞれの判断…。仕方なし…。と思っていた矢先、西村先生から再度電話があり「出演者の都合でこの座組みで再演するのが難しいため、映像で残せないか?」との相談を受け、ほいたら本番見れますなーと急きょ撮影で参加しました。

物語はおさらい会のWebサイトのあらすじを参照すると「アイルランドの絶海の孤島で、夫や子どもを次々と海に奪われていく老母の姿を描いた悲劇」とあります。
老母の役を劇団ゆまにての吉本ちかこさんが、彼女の娘をネリさんと濵田悠来さんが、そして末息子を山田くんが演じます。

肉親を失う悲しみと、残された家族を互いに思いやる繋がりと。
ちょうど先日まで今回の会場と同じ、藁工ミュージアムで開催されていた震災から10年を考える企画展とそのまま連動するような、さらには先日の能meets高知で心に残った「鎮魂」「追善」という言葉が当てはまるような作品で、山田くんの最初の登場は男性としては家族の中で唯一残った末息子としてでしたが、その後は海で亡くなった息子達として出てきます。
彼の生死を超越したような存在感や、華美な表現を排した所作も含め「まるでお能の公演だなー」と感じた次第です。

姉妹役の経験が浅いながら食らいつこうとする濱田さんと、それに寄り添うネリさんの眼差しはなんともステキでした。
そしてよしちかさん。よしちかさんのお芝居をちゃんと見たのはいつ以来…。確かその時は(というか大体)面白いおばさん的な役だったと思うのですが、毛色の違う今回の作品での役を掴む勘とこれまで培った舞台経験、そして人間力。いやー、素晴らしい役者でした。
あと西村さんのト書きと、外からの台詞の声の説得力ったら。

舞台の構成も相当練られており、おそらく物語ラストはお客さんも葬儀の参列者となったんじゃなかろうか。
願わくば舞台からの圧倒的な悲しみを受けて心が揺れたお客さんの空気を感じたかったなー。

とはいえ、本公演はあくまで延期ということですので、また新しい形で、今度こそお客さんの前で発表される機会があると思います。
またその時は見に行きますので!
ひとまずお疲れさまでした!