祝祭 音楽劇 小さな星の王子さま（2021.07.30-31）
本番から1週間経ったタイミングで、いろいろいろを楽しむ演劇Project、祝祭音楽劇「小さな星の王子さま」を振り返りますよ。
藁工ミュージアムの松本さんから「演劇公演を企画したい」とお話を聞いたのはどれくらい前だったろう。
「やりたい」と言うのは簡単だけど、「やる」のはたいへん。
でも藁工ミュージアムは「やる」ねん。各種助成金や補助金を獲得し、シアタコとタッグを組んで、2017年から「いろいろいろを楽しむ演劇Project」が始まりました。
テーマは「障がいのある方を含む様々な個性を持つ方や多様な立場の人々が、協働して演劇作品をつくり上演する」というもので、プロジェクトの1年目は2017年11月に蛸蔵にて、東京デスロックの多田さんを招いてのお話と、鳥の劇場の中島さんが立ち上げた、障がいを持った方と演劇公演を創る「じゆう劇場」が上演した「銀河鉄道の夜」のドキュメンタリー映画上映を行いました。
その時の感想を読み返すと、
「個性」を自分で確認できる瞬間は誰かとの関係があってこそ。
「互いに完全にわかり合えないこと」を確認するために誰かと繋がろうとすること。
なんてことが書いていました。
プロジェクトの2年目は美術館ホールにじゆう劇場を招き、「『ロミオとジュリエット』から生まれたもの」の上演を行い、さまざまな学びを経て、いよいよクリエイションに突入したのが昨年のことでした。
出演者を募り、2月に出演希望者の面談をし、半年間の稽古の後に2020年9月に上演予定でしたが、コロナ禍に見舞われ公演は1年延期に。
結果的に長期間の稽古となり、参加者の皆さんやサポートスタッフの方のモチベーションも心配されましたが、最終一人の脱落者も出さずに本番を迎えました。
これだけでも大成功と言えるのに、作品が、もう、素晴らしかった…！
原作の良さをそのまま残し、出演者や構成に合わせて書かれたなおみさんの脚本は、満天の星のように大切な言葉がキラキラ輝いていました。
藤岡さんの演出、おそらく言葉を尽くして、そして諦めずに何度も何度も繰り返したんだろうな。出演者への指導の丁寧さをキープしたうえで、シーンの美しさや展開のアイデアが見事に発揮された、素晴らしい演出でした。
出演者に寄り添うというのは、松本さんをはじめとした藁工ミュージアムのスタッフの皆さんの頑張りがあったからでしょう。
それに応えた出演者の皆さん、小屋入りしてからの変化は目を見張るほどで、慣れない舞台の緊張から自分のことにしか目がいかなかった初日から、日を重ねるごとに他の出演者への気配りが生まれ、本番を迎える時には劇団と変わらない確かな繋がりを皆さん持たれていたように見えました。
みんなで作品を良いものにしよう、演出を信じて良い作品をお客さんに届けようという想いが結実した、そしてプロジェクト1年目の感想に書いた「個性」と「繋がる」という言葉が帰着したような奇跡のような本番でした。
そして音楽を担当したハナカタマサキバンドの皆さん。
生演奏の音楽劇という、おそらくはじめての経験だったと思います。
出演者同様、短い期間で演出のオーダーにどうアジャストしていくか、合わせてみてはじめて分かる問題にどう対応していくか、普段のコンサートではありえない課題に向き合い、最高の演奏で応えていただきました。
エンディングの演奏で、感極まり声が出なくなって、シャウトしていたハナカタさんの姿を舞台袖で見ながら涙を流した私でしたよ。
終演後「そういえば、歌詞ってなおみさんが書いたんです？」「いえ、いろいろあって最終僕が書きました」とハナカタさん。
ハナカタさんが紡ぐ言葉とメロディ、なおみさんが紡ぐ言葉、そしてそれを全力で表現した全ての出演者とスタッフ。
舞台制作をもう30年近く続けていますが、忘れられない大切な作品がまたひとつ生まれました。
皆さん、本当にありがとうございました。
また、いろんな形で繋がっていきましょう！
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■出演
岡田リサ／岡村茜／尾﨑里美／上村優子／清里達也（TRY-ANGLE）／城下美穂／寺嶋彩／中田久美子／中山万結／松村聡／松村育美／湯浅由美子／米田奈央
■日時
2021年7月30日（金）19:00開演（18:00開場）
2021年7月31日（土）14:00開演（13:00開場）
■会場
高知県立美術館ホール
■料金
前売1,500円（当日2,000円）※全席自由
原作：サン・テグジュペリ
構成：シアターTACOGURA
演出：藤岡武洋（シアターTACOGURA）
音楽：ハナカタマサキ
演奏：ハナカタマサキバンド
舞台美術： stage factory greenroom
音響：山崎康弘（ゆっくりとじていく。）
照明：日野早人（屋根裏舞台）
衣装：サカシタナヲミ（シアターTACOGURA）
演出助手：伊藤麻由（シアターTACOGURA）
舞台監督：吉田剛治（ヨシダワークス）
サポーター：一柳恵子／田中正哉／中山虎汰郎／三谷文江
制作：藁工ミュージアム
主催：藁工ミュージアム／シアターTACOGURA・NPO蛸蔵
共催：高知県立美術館
協力：社会福祉法人 高知県社会福祉協議会／からくり劇場
高知県障害者文化芸術活動支援事業