南河内万歳一座「ラブレター」(2021.06.02)
昨日は一心寺シアターにて南河内万歳一座「ラブレター」を観てきましたよ。
「ラブレター」の初演は1989年で、当時30歳を迎える内藤さんが書き上げた、演劇やら、恋やら、人生やら、おそらく内藤さんの20代を振り返ったり、自身の心の底にある何かを相当反映させたであろう作品です。
ちなみに僕が万歳に関わるようになったのが2004年からで、自分と同世代の若い劇団員がひしめき合い、異様なエネルギーを放っていた集団が当時の万歳でした。
そんな当時の万歳のひとつの到達点となったのが、2010年に再演された「ラブレター」。
その年の文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど高い評価を得た作品で、僕自身、これまで観た万歳の作品の中で常に上位3本に入る、本当に、本当に大好きな作品です。
そんな「ラブレター」、昨年2020年の劇団40周年で満を持しての再々演の報に胸を震わせたのですが、なんと新型コロナウイルスの影響で、2021年に1年延期という事態に。
さらに状況を考慮し、延期後の日程は東京公演を諦め、大阪で久しぶりのロングラン、10日間14ステージで発表され、チケットも売り出したものの、大阪府の緊急事態宣言の延長により5月28日初日のはずが5月の有観客公演ができなくなり、6月1日(火)から6月6日(日)まで縮小され、さらにその後、緊急事態宣言の再延長で土日のイベントも無観客を要請されるという逆風極まりない状況に見舞われました。
5月下旬には緊急事態宣言再延長やむなしの空気も流れ「このままお客さまの前でこの作品は上演できないのか?」と、半ば諦めかけていたのですが、当初とは大幅に短縮となったけど、それでも、それでも上演する!と決めた万歳のみんな。
それやったらみんなに、作品に、会いにいかねば!と車を走らせた次第です。
11年ぶりの「ラブレター」。
戯曲は、一切変更されていませんでした。
冒頭のトタンを叩きつける雨、宛先が雨に滲んで読めない封筒、関係を絶ったはずなのにまた巡ってしまう誰かとの縁、演劇でしか成立しないであろうありえない展開、俯瞰する作家としての内藤さん自身。
11年前にも出演されてたみんなは、同じ役の人、役が変わった人もいる。同じ役でも深みが違うし、新しい役は任されたからこそだ。
2010年から後に入ったトンちゃん、サム、ありたつ、ことえさんは相当な大役で、当時その役を担ってた先輩を重ねながら見てました。
オーディション組も素晴らしく、男性陣の青白い男子高校生はすずむ先生の優しい視線にグッときたり、女性陣のキラキラさにドキドキしたり。
11年前に一切引けを取らない、素晴らしい、今の万歳の最高到達点としての、なんとも誇らしい「ラブレター」でした。
その中で、個人的MVPはことえさん。
まさかの2日目で喉をやってしまったアクシデントがあったからなのか、いや、そんなことも関係ないくらいの、まるで次元の違うような集中力をまとっていました。
先ほど戯曲は変更ないと書きましたが、実は演出もほぼ変更無く、唯一最後の最後の演出だけが変わっていました。
それを請け負ったことえさん、前作「ゴミと罰」も同様に言葉にならない何かを引き受けていたのが、今回もだ。
赤いシャツはそういうことなのか。
「百物語」の再演にも通じる、若くて勢いだけで突っ走っているからこそ、自身の視点でしか描けなかった作品から、再演にあたって大人になった内藤さんの俯瞰した視点がさらに物語を拡げたような、それを体現した最後のことえさんの表情や振る舞いに自然と涙が出てきたことです。
ああ、良い作品じゃった…。
そんな「ラブレター」、非常に限られた上演となりましたが、6月4日(金)のソワレを劇団初の生配信、その後アーカイブを6月いっぱいまで配信するそうです。
当然万歳マニアのわたしは配信もチェックしますので、一緒に観たい人は連絡くださいませー。
そして万歳のみんな、残されたステージを精一杯やっちゃってー!
ありがとうございましたああああ!!!