青年劇場「キネマの神様」(2021.07.06)
昨晩はかるぽーとにて高知市民劇場例会、青年劇場「キネマの神様」を観劇しましたよ。
劇場を運営する老夫婦と映写技師、劇場に通い続けて映画を見ているおじいさんとシネコンの開発プロジェクトを担当していたその娘、映画雑誌の編集者と編集長、映画制作に憧れる大学生など、登場人物全員に映画愛が溢れているという舞台はそうないんじゃないかしら。
物語は名画座「テアトル銀幕」を舞台に、劇場の存続や、映画雑誌の売上減少の危機を乗り越えるファンタジー感溢れるコメディでした。
小さな古い劇場をさびれていく街の象徴として描く作品は多くあるけれど、そんな劇場が世界的な映画監督や俳優からメッセージが届くほどになるという、ファンタジーの限界までいくような物語の突き抜け方はそうそうないでしょうねー。
さらに、物語の中心となるのは「劇評」で、これも相当珍しいんじゃないかと思います。
ふたりの劇評家の対決というか、作品に対する劇評家のアプローチの部分、うううむと唸ったり。劇中で劇評家が取り上げた「ニュー・シネマ・パラダイス」や「フィールド・オブ・ドリームス」を改めて見てみたくなったり。
舞台の構成も基本は劇場のロビーで、場面転換する際は舞台上下のパネルが回転して、ネカフェになったり、スタジオになったりと切り替わる演出も丁寧、季節の移り変わりを露店商が売る果物で表現するのも面白かったですが、なにぶん全体が丁寧に、たっぷり時間をかけているので、個人的にはもっとテンポが良かったらいいのになー、2時間50分のランタイムは結構しんどいなーと思ったことでした。
あと物語の中で、DVDなどのデジタルメディアによって劇場で映画を見る人が減っているという問題を、古い紙媒体の映画雑誌が劇評サイトを立ち上げ、ブログのコメントの応酬で世界的な評判を得るという、デジタルメディアを使いこなす側に回るというのも意外でした。が、Webサイトの演出がちょっと前時代的かなー、初演が古いのかなー。この辺は日進月歩の世界なので、なかなか難しいですね。
とはいえ、そんな細かいことを凌駕するハッピーな物語、十分に堪能させていただきました。
自分が作品をチョイスしないからこその出会い、市民劇場、大事にせんといきませんなー(1月以来の例会参加を詫びる表情)。