梅棒 14th WONDER『おどんろ』 高知公演 梅澤裕介、天野一輝 インタビュー

これは演劇なのか?ダンスなのか?
爆音で流れるJ-POPに乗って、ノンバーバル(言葉を使わない)で圧倒的にエモーショナルな舞台作品を創り上げる、業界大注目のダンスエンターテインメント集団「梅棒」。
中四国では初となる高知公演を上演するにあたり、彼らの作品制作のアプローチや、上演作品『おどんろ』について、梅棒メンバーの梅澤裕介さん、天野一輝さんのおふたりに話を伺いました。(聞き手:吉田剛治)

※撮影時のみマスクを外しております

――今回はじめて高知公演をされる梅棒さんですが、そもそもどういう経緯で高知公演が決まったのでしょうか…って実はよく知ってまして(笑)、県民文化ホールの事業を担当する、濵口さんの熱いラブコールがあったんですよね。

濵口(高知県立県民文化ホール):僕が最初に観たのが2019年の『超ピカイチ!』という作品だったんですが、これまで舞台公演を観て感じたことの無いような感覚になったんです!使ったことの無い脳の部分がフル回転してるような、ドーパミンが出まくってる感じになって、さらにあんまり夢中になりすぎて息をするのも忘れちゃって(笑)、終演後スタンディングオベーションをしようと立ち上がろうとしたら腰が抜けて立てなかったり(笑)、冗談抜きでもの凄い衝撃でした。

――そんなに衝撃を受けた梅棒さんを高知のみなさまにも!と今回の高知公演が決まったということで、嬉しい限りです。それではまずカンパニーについてお聞きします。「梅棒」という独特なお名前の由来は?

梅澤:もともと大学のダンスサークルをうちの代表の伊藤今人(いとういまじん)とやっていたんですけど、サークル外でもダンスをやることになって「チーム名どうしようか?」「梅にしよう」って適当な感じで僕の名前から取ることになって(笑)、しばらくは「梅」で活動してたんです。その後メンバーの隆太ってやつが辞めることになって「お前のことは忘れないからな」ってことで隆太の太の文字をカンパニー名に加えて「太梅」に改名しました。

「太梅」でしばらく活動してたんですけど、僕らのパフォーマンスを観た友達が「すっごい面白かったよ、こないだやってたあれ、あの、えーと、梅棒!」って名前を間違えて(笑)、「でもなんかそっちも面白いんじゃないの?」ってノリで「梅棒」に改名してやることになったんです。

――普通ダンスカンパニーの名前って、かっこいい横文字の名前が多いじゃないですか?

梅澤:そうなんです。クラブとかダンスイベントで、漢字でスポンってのは逆に目立つからいいなってのもありましたね。

――ちなみに皆さんを紹介するとき「ダンスカンパニー」という呼び方で間違いないですか?

天野:そうですね、カンパニーとしては間違いないですが、劇団という方が近い…演劇作品を作っている意識の方が強くって。ただ人に説明するときには僕らは喋らないし、踊っているだけだし、作品自体はダンスで構成されているので、「ダンスエンターテイメント集団です」って言ってます。でも自分たちがダンス集団なのか劇団なのかっていうのを意識している訳ではない…っていうか、気にしてないです。

――作品制作についてお伺いします。言葉を使わず、ダンスと音楽だけでストーリーを際立たせた創り方が特徴ですが、これはカンパニー結成当初から変わっていないんでしょうか?

天野:僕らの1本目の公演の時(2012年『スタンス』)はバラバラの3つの世界が交わっていくという構成で、全体のストーリーの面白さというよりは、それぞれの世界が交差していくギミックの面白さがメインになっていたと思います。

2本目以降は基本1つのストーリーになっていますが、創り方としては初期の頃は「キメ曲」みたいな、例えば一人娘をお嫁にやるお父さんの曲があって、それを基軸にして物語を創っていくというやり方が多かったです。そうやって作品を重ねるなかで、だんだんと「曲先行」から「物語先行」の創り方になっていってますね。

あとは初期の頃は、リーダーの伊藤今人が全ての構成や振り付けを考えていたのが、いまは曲ごとにメンバーに担当分けをして「この曲の間にストーリーのこの要素を盛り込みたい」とかを共有して、全体で創っていくようになっていますね。

――そうやって創作を重ねることで、作品の精度が高まっていくイメージでしょうか?

天野:精度が高まっているかは僕らは分からないですね(笑)。プロット上の展開と、いざ形にしたとき、お客さんに簡単に伝わったり、伝わりにくかったりってギャップが相当あるので、稽古で一度創り上げたものを何度か壊して、スクラップアンドビルドって創り方をするから、効率的には他の演劇作品と比較しても相当悪いですね。

――通常の演劇公演だと、台本が上がって1ヶ月ほど稽古して本番って感じですけど、梅棒は稽古期間としてはどれくらいなんですか?

天野:普通はプロットと楽曲が決まって、本番の一ヶ月半くらい前から稽古です。

梅澤:ただそこに至るまでの曲をどうするのか、ゲスト誰を呼ぶのか、出てくる方によっても演出プランが変わるので、稽古開始までの作業は相当ありますね。

――ちなみに選曲するにあたって、楽曲の歌詞と物語の繋がりは考えられているんですか?

天野:「こういうフレーズが入って欲しいな」というのはあります。他にも物語の流れの空気感や、前後の曲のバランスとかで曲を決めることもあるし、逆に前後の流れ関係なく「この曲でコレやったら面白くね?」ってやっちゃったりもしますね。

――では今回の作品『おどんろ』についてお伺いします。この不思議なタイトルはどういう経緯で決まったのでしょうか?

梅澤:妖怪が出てくる物語なんですけど、メンバーでタイトルについて「おどろおどろしいけど、楽しい感じがでるような、いいフレーズはないかな?」って話をしている時に「おどんろってどう?」ってアイデアがメンバーの鶴野(輝一)から出て。皆で「いいんじゃない?」って決めましたね。

天野:造語ではありますね。響きの可愛さだったり、文字面の曲線感とか。

梅澤:あとは「踊ろう」って言葉の意味も含んでいたりします。

――ストーリーについて、構わない範囲で教えていただけますか?

梅澤:街に今まで見たこともない、新しい妖怪が現れて、街が大変なことになるってお話と、そんな街に住むしがないサラリーマンがいて、そのサラリーマンが妖怪と出会うことで運命が変わっていくというストーリーです。

――資料によると「NEO妖怪」とあります。これはつまり「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくるような妖怪とは違うってことですか?

梅澤:そうですね、皆さんが知っている妖怪とは違う、オリジナルの妖怪です。楽しみにしていてください。

――ゲストについてお伺いします。ゲストの選定についてはどのようにされているんでしょうか?

天野:今回だったら小越勇輝さんや大西桃香さんのような、これまで別の現場でご一緒したり、舞台等で観た中で、20何曲踊り続けられるガッツがあって、ダンスパフォーマーとしても説得力のある方にお声がけしています。

「この役だったらこの人が合うな」て役にはめていくパターンもあります。例えば、NANOIさんはアニメーションダンス・ロボットダンスを得意とされていたり、RiNnAさんは凄く身体が柔らかかったり、普通の人間ができない動きを妖怪の要素として取り入れたら面白いかなってキャスティングしたりもします。

あとは僕らの創作過程が「創っては壊して」行うことが多くて、それをしんどいと感じるんじゃなく、前向きに楽しく「良いモノを創るために頑張ろう!」ってモチベーションでやってくれる方がいつも揃っていて、本当にありがたい限りです。

――それでは作品の見どころを教えてください

梅澤:メインの見どころが必ずしも見どころじゃ無かったりもするんで(笑)、いつも説明するときは難しいんですけど(笑)、その中でも見ていただきたいのは妖怪です。身体の動きを活かした妖怪達を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

――ちなみにおふたりは高知に来られたことはありますか?

梅澤:初めてなんです。

天野:四国自体初めてです。

――初高知からまだ数時間しか経ってない中で恐縮ですが、高知の印象っていかがでしょうか?

梅澤:綺麗な川。鰹。坂本龍馬。あとなんか凄く楽しい飲み広場があるって聞いてます。

天野:僕も似たようなもんですけど、空気が綺麗そうとか、あったかそうな感じ。

梅澤:初代の桃鉄(ゲーム:桃太郎電鉄)で高知に止まると、砂浜が広がるんですよ(笑)

天野:小学生当時の地理って、基本桃鉄ですよね(笑)、親に桃鉄勉強になるからって買ってもらったくらい(笑)

――確かに(笑)。それでは恐らく大半の方が初めましてとなる高知のお客さまに、メッセージをいただけますでしょうか?

梅澤:みなさんが想像している舞台とはきっと違うので、そういった意味でも楽しめると思います。多分観た事ないですよ(笑)。

――高知でこれまで上演してきた舞台公演のどれにも当てはまらないと(笑)。

梅澤:当てはまらないと思います。騙されたと思って観に来てほしいです。そして高知公演は一回しかないので、「なんか観たことがない舞台とか言ってるけど確かめに行こうぜ」くらいな気持ちでぜひ来てください。梅棒を全く知らないってのは僕らからしたら楽しめるチャンスです(笑)。

天野:僕らのファンの方がSNSで書いてくれた中に「梅棒を初めて体験する衝撃を味わえるのがうらやましい」ってあって、ファーストインプレッションを越える衝撃ってなかなかない、「初めて」って一回切りのものですし、それを楽しんでほしいです。さっき言ってくれたように、きっとこれまでにない形態のパフォーマンス・演劇だと思うので、どうか楽しみにしていただきたいです。

――しかしこの面白さを言葉にするのは、非常に難しいですよね…プロモーション泣かせというか。それでも動員が上がってきているのは、やはり一度見たお客さまの口コミだったりするんでしょうね。

天野:そうなんです。どうやっても説明できないから、劇場に連れてくると(笑)。「観りゃわかる」って(笑)。

梅澤:「つまらなかったらチケット代返すから」とか(笑)。そんな言葉でなかなか言い表せられない中で適切かなーって思っているのが、最近「2.5次元」ってあるじゃないですか。僕らはそれではなくて「3Dコミック」が近いんじゃないかって。もっとマンガに近いことを舞台の上でやっているってのが正しいのかなー。「飛び出す絵本」みたいな。

――ありがとうございました。そんな梅棒の高知公演は2022年4月27日(水)です。本当に「百聞は一見にしかず」ですので、どうぞ多くのご来場をお待ちしています!

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What’s  梅棒(ウメボウ)!?

【踊りは気持ちだ!】をコンセプトとして2001年に日本大学藝術学部ダンスサークル『BAKUの会(現:Dance Company BAKU)』内で結成。
ストーリー性の有る演劇的な世界観をダンスとJ-POPで創り上げる、ダンスエンターテインメント集団。 「多くのお客様が感情移入し、共感、感動できるパフォーマンス」を信条に、「劇場型ダンスエンターテインメント」を提供。
2009年、ストリートダンス界最大のコンテスト『JAPAN DANCE DELIGHT vol.16』にて特別賞を受賞。当時、ジャズダンスを用いたチームでは前例のない偉業を成し遂げる。
2012年、国内最大の振付作品コンテスト『Legend Tokyo chapter.2』にて圧倒的な得票で優勝を飾り、日本一の称号を手にする。
同年より、活動の中心を劇場公演へ移す。演劇・ダンス・音楽ファンなど様々なエンタメ好きに好評を博し、東京芸術劇場、PARCO劇場、世田谷パブリックシアター、俳優座劇場、東京グローブ座、Zeppブルーシアター六本木、新国立劇場、本多劇場等、数々の劇場を満員札止めに。2018年度の梅棒公演の動員数は25,000人を超える。
劇場公演以外でも幅広く活動し、話題のTVドラマやミュージカル、アーティストLIVEやミュージックビデオ等の演出・振付を手がけ、業界各所からの注目度も急上昇中。
近年の代表的な作品・イベントとしては『キューティ・ブロンド』、舞台『刀剣乱舞』、MANKAI STAGE『A3!』、『TOKYO TRIBE STAGE』、宝塚歌劇団 星組公演『GOD OF STARS-食聖-』、TVドラマ・映画『今日から俺は!!』、『スーパーサラリーマン左江内氏』、『おかあさんといっしょ』、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』、『NHK紅白歌合戦』郷ひろみ、GReeeeN Liveツアー、嵐『夏疾風』、『DANCE DANCE ASIA』、『YATSUI FESTIVAL!』、『ラグビーワールドカップ2019「日本vsアイルランド」4K・8Kパブリックビューイング』 等『ダンス×演劇×J-POP』 エンターテインメントの現在を進化させ続ける、最注目の団体。

https://kkb-hall.jp/event/event_detail.cgi?event_id=1193
https://www.umebou.com
http://umebou14th.dynamize.net/

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聞き手・文=吉田剛治
1973年高知市生まれ。高知を拠点に⻑年舞台制作業務に携わる。現在は高知市にある藁倉庫を改装した劇場「蛸蔵」の運営や、市⺠による音楽交流団体「国際的な音楽交流を中心に高知を楽しくするプロジェクト」、自主上映団体「Sound=Cinema」の事務局を務めるほか、高知の若手演劇人の底上げを目的としたプロデュース公演などを行う。また公演の執筆業など、舞台に関する活動は多岐にわたる。