南河内万歳一座「改訂版 二十世紀の退屈男」(2022.05.28)
昨日は一心寺シアターさんにて南河内万歳一座「改訂版 二十世紀の退屈男」を観劇してきました。
「退屈男」は1987年初演。初期の万歳を代表する作品として再演を重ね、2018年には伊丹アイホールの「現代演劇レトロスペクティブ」という再演企画で、内藤さんが関西の若手演劇人と創り上げた公演以来となります。
今回は改訂版と称し、二十一世紀になってもロクな事になっていない今の世界にシニカルな視線を送りながらも、初期万歳ならではの青春の焦燥感や衝動、いろんな意味でw肉体を駆使した演出も交えた公演となりました。
物語を説明するのは難しい。
西日差し込む、これまでの住人の記憶が壁や床に染み込んだ、6畳一間のアパートの窓辺に座り、何者にもなれない自分に対する焦りを募らせる男。
「せめて雨でも降れば賑やかしいのに」と退屈な日々を過ごす男の元に届いた、滲んで宛先の分からない手紙。
この手紙は、自分に宛てたものなのか、前の住人に宛てたものなのか。
「雨宿りをさせてください」とやってきた女に向かって言う「ずうずうしいにも程がある。ひとの部屋をいきなり訪ね、一方的に話を運び、返事を強要する」という男の台詞は、まさに手紙を表しているようだ。
と、主なテーマはセンチメンタリズムが炸裂する内藤節。
その上で展開されるのは、肉体武闘派演劇集団と初演当時は呼ばれていた南河内万歳一座。何をするかというと、暴れるのですw。
今回オーディションで選ばれた9名の若さ溢れる演劇人と、いろんな角を曲がった円熟の劇団員による肉弾戦。
大笑いしながらも、グチャグチャにならないように絶妙なバランスを保ちながら暴れる皆さんに感心したことです(銭湯のシーンはアウトでしたけどw)。
自分の観劇コンディションの問題かもしれませんが、2018年のアイホール企画の際は、物語やシーンの面白さが上手く入らなかった印象だったのが、今回ズバッと頭に入ったのは、劇団公演だからじゃないかしら。
ジローさんをはじめとする先輩からのタスキをしっかり繋ごうと奮闘する、すずむ、サム、ありたつ、とんちゃん。激しくしなやかに舞台を遊ぶことで万歳イズムを体現する、内藤さん、鴨さん、ゴリさん、あゆさん、まつ。必死のパッチで食らいつく勇者の皆さん。
劇団に40年の歴史があるからこそ再演を重ねることができる。
時代が変わり経験を重ねることで、得るものも失うものもあるけれど、きっと作品が生まれたときの魂は変わらない。
若いときのように高く飛んだり、危険な受け身はできない、怪我を重ねてカラダはボロボロだけど、ハートだけは変わらず熱いベテランプロレスラーのような、かっちょいい劇団やなー。好きやなー、万歳(恋は盲目)。