ショープロジェクト「花を摘む人」(2022.07.15-17)
ショープロジェクト「花を摘む人」。終演から一ヶ月半経ってしまったけど、頑張って振り返ります(ごめんなさい)。
高知県出身、現在大阪の劇団「空の驛舎」に所属される山本彩さん。
高知の演劇人・井上杏里さんと同級生で、杏里たんとのユニット「U2」では、2015年に里帰り公演もされています。
またショープロジェクト代表の戸梶さんとも同級生・さらに同郷とのことで、戸梶さんは高校演劇の頃から山本さんの書く作品に魅了され、2019年のショープロ旗揚げ公演では山本さんに戯曲執筆を依頼し「君ハ嗤ウ」を上演しました。
続いて2020年にショープロ第2回公演として本作を上演すべく書き下ろしたのですが、新型コロナウイルスの影響で残念ながら上演は叶わず。そんな中、OMS戯曲賞は通常ならば上演された作品が審査対象となるところ、この年は例外的に未上演の作品も審査対象となり、あれよあれよと本作が高知出身の戯曲家として初のOMS戯曲賞の大賞を獲得し、今回2年越しの上演となったのです。ファンタスティック!!
さてさて物語につきまして。
大きなダムに沈んだ小さな集落を舞台に、そこに住む人やそこを訪れる人を中心に描かれます。
全4場。
各場は基本的には2名の登場人物による会話劇。
小さなもの・弱いものが、大きなもの・強いものの犠牲になるのは仕方ないことなのか。
故郷を失うとはどういうことなのか。
数年、十数年、何十年の時間を前後しながら、ひとつの家族が受けた痛みや苦しみ、大きな流れに抗う想いが響きます。
時間だけでなく、抽象と具象を行き交うような場面の印象で、おそらく思いっきり具象的だった2場のあるシーン。
移住促進に励み、外部からのお客さまを迎えるイベントを準備する兄に向かって言う妹の台詞。
「村にも寿命があると思う」
「よそ者呼んで、新鮮な臓器を移植して、無駄な延命治療」
これ以上無いくらいのクリティカルな言葉を受けても戦う兄が、きっと知らず知らずに背負っている、いろんなものを想像すると…おそらく誰もが抱えている何かに置き換えられるのかも知れません。
もうひとつ、驚いたのがト書きです。
ト書きとは台本上、台詞の間に書かれた、最低限の状況描写や動きの説明なのですが、この戯曲のト書きは全く違います。
こんなに間接的に心情を表現した、詩のようなト書きがあるのかしら。
そしてこれは誰の心情を表現しているのか。
OMS戯曲賞受賞作なので、おそらくどこかのWebサイトで公開されていると思います。
興味のある方は是非読んで欲しいなー。
舞台構成など、なかなか手強い(やりがいのある)作品に挑んだ吉良さんを演出とする高知チーム。
委員長の腕が光った舞台転換はじめ、真っ正面から向かい合った作りとなりました。
ネイティブ土佐弁で書かれた戯曲をネイティブ土佐人が表現する言葉の心地よさも素敵でした。
そして、この作品は10月、ウイングフィールドにて、空の驛舎の皆さんで上演されるのです。
当たり前ですが、すでに公開されているフライヤーデザインからして全く違う。
これと同じように、戯曲解釈、舞台の作り方、俳優の皆さんと挙げていったらキリが無い…。ど…どんなになるんだろう…。
高知・大阪と違う演出、違う劇団で見ることのドキドキったらないですね。
自分の本番があって、めちゃくちゃギュウギュウなスケジュールですが、これは見に行かねば。
僕の「花を摘む人」はまだ終わらない!