下鴨車窓「微熱ガーデン」(2022.12.17)
昨日は蛸蔵にて、下鴨車窓「微熱ガーデン」を観てきましたよ。
下鴨車窓さんは京都の劇団で、お名前はずっと伺っていたものの、今回初の高知公演。わくわくドキドキの初観劇となりました。
舞台セットは2間×2間のひし形・アシンメトリーな、不安定なイメージ。
白いパイプをつなぎ合わせ壁を表現し、カーテンや部屋の角におかれた装飾で、おそらくここは部屋を表しているのだろうけど、異様なのはその部屋にブルーシートが敷かれ、長机が3台置かれ、その上にポリバケツで栽培されている植物が見えます。
ここはある大学生が一人暮らしで借りたアパートの一室で、その居住スペースを大麻を連想する違法植物の栽培場所にしているという、突飛な設定。
いや、果たして突飛なのか?
この物語の後ろに透けて見える若者の貧困という問題。
この国は、いつの間にこんなことになっているんだ?っていうのがメインの感想です。
以上!!
…ではあまりにもなので、ちゃんと感想を。
実際に舞台に立つ登場人物は3名。
この部屋に住み、違法植物を育てることになった女子大生・ユイと、彼女にこの仕事を紹介した同級生のリナ。
学費を稼ぐために夜の街でアルバイトをし、おそらくそこで知り合ったであろう大麻の販売を斡旋するリナの恋人の男と、ユイの住むアパートの下の階に住む、仲良くしてくれていた、そして孤独死で亡くなっていたおじいちゃんは舞台に出てくることがなく、おじいちゃんの孫の男性が意外な方向に物語を展開させていきます。
学費。奨学金。単位。レポート。バイト。
普通の大学生、普通の若者。
大人っぽい格好して背伸びしてるリナと、やぼったい服装のユイ。
劇中のふたりの会話も幼さが感じられる、どこにでもいる普通の大学生ふたりが転落する様。
いつの間にか、俯瞰した視点から、彼女たちの視線に立っていて「バレる?」と、まるで共犯者のような心情で舞台を観ていたことに気付きました。
戯曲構成の緻密さと、シンプルながらも心の何かを突いてくる照明と音響の力。すごい。
物語後半、分かりやすいチンピラのリナのDV彼氏ではなく、善人としてユイを見守っていたかに思えたおじいちゃんの黒い面が出たときは衝撃でした。社会システムとしての生きにくい世の中と違う、歪んだ個人の黒い心も、そうよね。あるのよね。それを両方描いちゃうのね。
そんな僕らが暮らす世界と地続きの、物語の世界で彼女たちが必死で生き抜くさまの美しさこそが、この作品だったのかな。
良い作品に、よい劇団に出会えました。
下鴨車窓の皆さん、座組みの皆さん、高知に来てくれてありがとうございました。
今回のご縁が、今後ゴロゴロ転がっていきますように。
下鴨車窓「微熱ガーデン」はこの後、松山シアターねこで上演します!
高知公演を見逃した方は、松山へ走れ!