「PORTAL」(2016.03.20)
怒濤のバラシと打ち上げと蛸蔵ラボの仕込みの影響により遅くなってしまいましたが「PORTAL」の感想文を。
この作品は大阪府豊中市にできる新しい劇場のプレ公演として制作されることとなり、「豊中で作った作品を高知に持っていきたいんや」と、いろいろお世話になっている奈良さんからの相談(強要)を受けて実現しました。ツアーは地域創造さんからの助成をいただき、実現できたこともお礼申し上げます。
奈良さんから相談を受けた段階で、林さんという、奈良さんが今注目してる作家に作品を作ってもらい、それを維新派の松本さんが演出するんだよと説明を受けまして、そこで林さんという劇作家のことを知りました。
はじめて出会う林さんの作品、そして維新派松本さんの演出作品を高知で見るという非常に贅沢な機会。わくわく期待に胸を膨らませて臨みました。
感想。
圧倒的な情報量に飲み込まれ、溺れそうになり、気付くと何かしらの思いや光景が染みこんでいた、素晴らしい劇体験でした。
爆音でかかる音楽、5拍子・7拍子のリズムによって発せられる台詞と、無表情な隊列の美しい動き。床面や袖パネルに投射される地図のイメージ。
豊中市をモデルにした空港近くにある没個性の街で、没個性の人達が発する淀んだ空気に、言いようのない焦燥感に駆られる男。
誰でもない、正体のない、イメージで作られたクラウドという案内人。
中心から振り回され、果てまで飛ばされる男の、そもそも中心とは、果てとはどこなのだろう?
もうひとつのキーワードはイングレスというAR(拡張現実)を使った、実際の地図上で行われる陣取りゲームです。同じ街に暮らしている人なのに、見えている世界は人によって違うということが、すでに現実に起こっている。
敬愛する音楽家・向井秀徳さんが叫ぶ「冷凍都市」なんて言葉も浮かびます。
明確な物語というよりは、いろんな断面を切り取って浮かび上がる「街」のイメージ。
打ち上げの時に読まれた松本さんのメッセージにもあった「衛星都市の写真集」という言葉に「なるほどなー」と膝を打った次第です。
あーおもしろかった。
いまでも余韻を引きずり、7拍子が頭で自動再生されています。
今回の公演はじめ、最近の四国の演劇事情は多様な作品が上演され、なんだか楽しいことになっていますな。
その一端を担えるよう、今後も精進していかねばー!
まずは今週末蛸蔵ラボ2ぅ!