ペピン結構設計「パラダイス仏生山」(2016.11.05)
昨日は演劇まちあるき「パラダイス仏生山」に参加してきました。
パラダイス仏生山は今年で3回目を迎えるそうで、昨年参加した吉良さんの異様な興奮っぷりと、主催であるペピン結構設計さんの過去の公演タイトルに初期RCサクセションの名曲「ぼくの自転車のうしろに乗りなよ」を見つけ、強く強く惹かれての今回の参加となりました。
当日、天候やら気候やら、正直よろしくないお腰の具合を心配しながら会場へ。
琴電仏生山駅前での受付で、3コースの中から選択を迫られまして(A「アンとビガーズ」、B「駅前で待ってる」、C「日山の鳥」)、タイトルの直感と、一番運動量が少ないという説明でわたしはBコースを選びました。
最初に通されたのは駅前の喫茶店「銀嶺」。
こちらは昨年、長年にわたる営業を終えたそうですが(現在は観光案内所として運営されています)、その開店時からお店を切り盛りしていたお母さんと、そのご主人、娘さん、そしてお店を立ち上げ、7年前に亡くなられたおばあさんのお話を伺います。
なんてことはない、と言ったら失礼ですが、それだからこそ身近に感じるそれぞれのエピソード。ご本人の口からたどたどしくも語られる人生の端々。この後のツアーの途中で出会う仏生山で生まれ、琴電で勤め上げる社員の方のお話もそうですが、この作品はまちに生きる人の「記憶」の物語なんだなと感じました。
ご本人が語るリアルさもそうですが、今回一番心に残ったのは「場」の持つ力でした。
喫茶「銀嶺」はおそらくおばあさんが亡くなってからは居住スペースは使われていないのだろう、当時の暮らしがそのまま残った空間におじゃました際に感じた「体験していないにもかかわらず、感じる郷愁」。
同じく琴電にお勤めされ、今はお住まいになっていない方のお家に入ったときの、思い出がそのまま閉じ込められたまま長い時間が経過したであろう、まるで時を閉じ込めたようなお家。古いオーディオやテレビ、壁紙、台所、本、写真アルバム…。
もうひとつ強く感じたのは、路地です。
今だったら区画調整なんかで残っているのが不思議なくらいの、入り組んだ路地が仏生山はそのまま残っていました。
自分が4〜5歳くらいの記憶が蘇るような、狭くてブロック塀に囲まれたり、用水路に落ちそうになったり、畑のあぜ道なんかの敷地か公道かわからないような道をドキドキしながら歩いた記憶。おそらく当時の秋の頃に嗅いだような周囲の匂い。
はじめて訪れたまちで、40年ほど前の記憶が蘇っている不思議。
ツアーの最後は日の落ちた田園に3コースの参加者が集まり、相撲甚句「当地興行」を聞いておしまいとなりました。
一期一会。さよならだけが人生だ。
何かを揺さぶられて、何かを見せつけられて、なんだか自分の根っこを見つめ直しているような不思議な体験。
制作的にもものすごいことだなと思います。でも今回の感想は作品に浸っておしまいにします。
素晴らしい演劇体験でした。