ばぶれるりぐる「泳げない人たち」(2024.10.27-28)
ばぶれるりぐる「泳げない人たち」振り返り感想文。
今をときめくばぶれるりぐるが、竹田モモコさんの地元土佐清水限定の新作公演を上演したのです。すごいことなのです。
そもそもの経緯は、本年2月にかるぽーとで上演した本公演「川にはとうぜんはしがある」を、モモコさんの母校の先生が見に来られたことからでした。終演後の楽屋あいさつで先生が「母校の生徒に講演をしてくれないか?」とモモコさんに尋ねたところ、同席してた土佐清水文化会館の柿谷さんが「先生、それはいかん。この人(モモコさん)は演劇をする人で。やるやったら講演じゃなくて、演劇を学生に見せちゃらんといかん」と格好良い進言をしたところから始まります。
とはいえ、講演会と演劇公演だと、かかる経費が全く違います。教育委員会にもそんな予算はなく、最終的に「土佐清水市内の中高生(のちほど小学6年生も加わる)を対象とした総見と、入場料を取る一般公演の2ステにすることで収入を上げ、さらに制作にかかる経費は最小限に抑える」という枠組みで、モモコさんが清水の若者に向けた新作を書き下ろし、上演することとなりました。
最小限の費用ということで、いつものスタッフの皆さんは帯同せず(プランを提供いただきました)、会館の田村君、池田君に加え、音響照明はわたしがボランティアで、大道具と舞台監督はTRYーANGLEの岡内君に入ってもらうという異例のスタッフ体勢。
そしてモモコさんの最新作が大阪でも東京でも高知市でも上演せず、土佐清水の2ステのみという異例の企画。
さぁ、こんな枠組みで、モモコさんは土佐清水の若者に向けて、どんな作品を作るのか?
物語の舞台は、古びた水族館の事務所らしき場所。
高校を卒業し、そのまま地元の水族館で働く真帆(東さん)と、先輩職員(泥谷さん)、館長(や乃さん)が、そこで保護された、なぜか人間とコミュニケーションが取れる新種の生き物をめぐって、関係のないお弁当屋さん(モモコさん)も加わりながらわちゃわちゃするというものです。
物語の軸は、真帆の言う「友達らぁ、おらん」という台詞。ライフステージの変化はみんな同じタイミングじゃなく、仲良しだった人も離れていくし、自分の考えを肯定してくれる謎の生物(ちょっと違うかもしれないけど、エコーチェンバーなんて言葉も浮かんだことです)の居心地のよさと危うさ、「意思の疎通ができんのが友達なが。違う意見でムカつくのが友達なが!」と返す泥谷さんのどストレートな台詞など、普段のばぶれるりぐるとはちょっと違う、いや、よく考えたら違うこともないかしら。不安がいっぱいで、吹けば飛ぶような小さな存在を「あんたはそれでもえいがよ」と、ギュッと抱きしめてくれるような作品でした。
この作品が、清水の若者に、どんな感じで届いたかなー。
終演後は出演者を交えたトークを行ったのですが、2日目の清水高の生徒さんに向けたトークがとっても良かったです。
「地元出身で成功した偉い人が素晴らしい話をする」んじゃなくて、皆となんにも変わらない高校生だったモモコさんが、どうして演劇を選んだのかという話に加えて、俳優という道を選んだ皆さんのそれぞれ人生の片鱗が伝わるようなお話と、チャーハンさんも含めて表現を職業にする皆さんの根っこの想いを話された、とても素敵な時間となりました。
相当厳しい条件にもかかわらず、作品もトークも清水のヤングに全力でぶつかっていった皆さん、超カッコよかった。
そしてあたくしは…2ステージ目に大切なきっかけを飛ばしたことをここに記しておきます…。帰り道の車内でひとり、何度悶えたことか…。また皆さんとご一緒できるよう精進しますので、どうぞどうぞ、今後ともよろしくお願いします!
舞台は海辺の街の水族館。
この潰れかかった小さな水族館のバックヤードは、今、ひっそりと湧いていた。
数日前にみたことのない新種の動物を保護し、飼育しはじめたのだ。
名前のない「ソレ」に人々はいろんな感情をかさねる。
水族館の一発逆転を狙うもの、未知の「ソレ」を敵だととらえるもの。
人々の本音や悩みをあぶりだす不思議な「ソレ」の出現によって、
もともとまとまりのなかった水族館のスタッフたちがさらにバラバラになってしまい……!?
日本で唯一、幡多弁で芝居を作り続ける、ばぶれるりぐるの短編新作。
作
竹田モモコ
演出
チャーハン・ラモーン
出演
泥谷将、東千紗都、や乃えいじ、竹田モモコ
協力スタッフ
寺井ゆうこ(制作)
久保克司(舞台美術プラン)
葛西健一(照明プラン)
岡内宏道(舞台監督)
吉田剛治(音響)
日時:2024年10月27日(日) 18:00開場 18:30開演
会場:土佐清水市立市民文化会館
料金:一般3,000円(当日3,500円)、高校生以下無料
お問い合わせ:土佐清水市立市民文化会館 0880-82-3300