シアターランポン「ラスタマオ」(2024.11.21)

長野県松本市の期間限定劇場・ランポンシアターにて、シアターランポン「ラスタマオ」を観てきましたよ。
松本に来たのは2021年のFESTA松本以来。その時も車で行ったのですが、片道660km、約8時間の運転疲れを吹っ飛ばす、もの凄い体験でした。FESTA松本はメチャクチャ多様でメチャクチャ面白い作品が何本も上演される演劇フェスで、当時のホストカンパニー、TCアルプのメンバーはそれらを掛け持ちしながら走り回るという、クレイジーなクリエイション(死んじゃうよ)に度肝を抜かれたのですが、今回は違うベクトルで度肝を抜かされました。

公共や大手に頼らず、自分たちで劇場を作り、自分たちでお客さんを集め、松本から世界に向けた作品を作ろうとするシアターランポンの皆さん。
その根っこは串田和美さんの独立精神だと思います。TCアルプの活動の中で、様々な経験と学びを共にし、最終的に松本に残ったみんなが選んだのは独立するということ。相当な覚悟があったと思うし、この選択は何よりも串田さんの教えを忠実に実践した結果かも知れない。

この独立を、松本の街の人は、全国の演劇関係者はどう受け止めたのか。串田さんという大きな傘から離れ、身ひとつで立ち上がった彼らは、厳しい雨風に晒されるんじゃないかしら。結果は否でした。
駅前の雑居ビルにできた空き店舗を、非常に良い条件で貸し出してくれたオーナーさん。内装や電気工事など、手弁当で駆けつけて手伝ってくれる地元の大工さんたち。俳優しかいないカンパニーなので、親身になっていろんなアドバイスを送る舞台スタッフの方々。街中に貼られた公演ポスター。キャパは少ないとは言え、口コミを重ねて2週間17ステージの大半を完売する動員力。
松本の街に暮らす多くの人たちがシアターランポンを応援している空気。
細川さんと会った当初に言われてた「演劇を街の話題にしてもらえる」ような活動を、ランポンのメンバーが真っ直ぐに続けたからこその奇跡なのかも知れない。

ああ、長くなった。作品につきまして。
演劇は自由。
俳優とお客さんと想像力があれば、どんな物語もできちゃう。
好き。
以上。
…だとあんまりなのですが、ホントにそんな感想でした。

今回は武井さんの作演出の作品で、召集令状を思わせる赤い手紙など、物語の序盤から「武井さんがお父さんになったことで感じる社会がテーマなのかなー」と思った次第です。
劇場という小さな世界と、ドアの外にある広い世界。みんなそれぞれの方法で、よく分からない外に出て行くもんね。お父さん、心配よね。
一方、今まで歩んできた自分自身の道を振り返ると、これで良かったかどうか、分からないよね。
そんな決して自信満々じゃない人同士が、小さな奇跡を重ねて出会ったり仲良くなったりするって、素敵よね。

小さな奇跡で言うと、幕前芝居にグッときちゃいました。初めて見た西脇さん、凄い。
東京から来た人が「僕ら凄いでしょ」じゃなくて、確実に松本オリジナルのカンパニーとして客演含めて育っているんだなー。
街にこんな劇団が在るって、うらやましいなー。

次回本公演の構想などもちょっとお聞きして、シアターランポンのこれからの活動に目が離せません。
願わくば、もうちょっと近くに松本市があったらいいのに…(無理言うな)
皆さん、ありがとうございました!!