空想紀行「36.5℃の微熱」(2024.12.07)
蛸蔵にて空想紀行「36.5℃の微熱」を観てきましたよ。
空想紀行は、田坂涼さん(えるるん)と野村春菜さん(のむはる)による、次代の高知の演劇を担うであろう素敵ユニット。
空想紀行としての旗揚げは昨年ですが、それ以前から彼らの世代を中心としたプロデュース公演などを精力的に重ねていました。ところが、それらの公演がことごとく自分の本番と重なってしまい、今回満を持しての初観劇。
このユニットは、えるるん、のむはる両方が戯曲を書きまして、旗揚げ公演はそれぞれの短編を持ち寄った内容、今回はえるるんの作演出作品となります。えるるんの戯曲を観るのはきっと今回が3本目。まだ型を作らずいろんなアプローチをされてる印象がある一方で、おそらく彼の劇作の要になるであろう、人物や出来事を観察するセンサーの繊細さが今回の作品にも出ていました。
物語はあるイベント会社がウィルス禍や後継者不足などの問題で開催できなくなっていた街のお祭りを復活させるというもので、その担当を任された若手社員と先輩社員、彼らを応援する周囲の人物を描くものです。
お祭りを再開させる部分には重きを置かず(とはいえお祭り再開までのディテールが丁寧で感心しました)、あくまで人物にフォーカスした内容。
客演も下尾さんや行正さんといった個性的な俳優さんが魅力を発揮していましたが、その中でも目を引いたのが新人社員を演じた高知大演研の玉井悠裕さん。相手の台詞を受けて、身体の反応があって台詞を返すという、基本的なやり取りのテンポがとっても良く、役どころもあってバッチリはまっていました。
会議室でのむはると打ち合わせ中の、玉井さんが前のめりに進める感じと、のむはるがそれを怒る場面、強く怒鳴った訳でもないのに、その怒りが客席にも伝播するような空気が生まれたのは凄かった。
一方で、この一件を機に変化したとされる先輩(のむはる)の、冒頭(平熱)とラスト(微熱)の描き方が、少し見えにくかったかしら。そんなに人は劇的に変わることはないだろうけど、お仕事や人生に向きあう姿は一貫して真っ直ぐ情熱的に見えたし、もう少し台詞以外の面で変化を感じ取れたら良かったかなと思った次第です。
とはいえ小規模な座組みにも関わらず(スタッフワークはえるるんが一手に引き受けてるのも凄い)、3ステ満員という動員は、空想紀行に大きな期待が集まってる証拠だと思います。
次回本公演は、高知ではまだ珍しいインプロに挑戦するそうで、これからさらにいろんな表情を見せてくれそうな空想紀行、楽しみにしております!
皆さん、ありがとうございました!