南河内万歳一座「予言者・H」(2025.05.28)

旗揚げ45周年を迎える南河内万歳一座。
わたくしも劇団の歴史の半分くらいのお付き合いをしておりますが、今回内藤さんより「劇団ではこれから再演をしない、そして次回の新作公演は未定」という衝撃の発表がありました。
確かに近年の万歳は「唇に聴いてみる」「二十世紀の退屈男」「ラブレター」といった初期万歳の代表作の再演が高い評価を集める一方で、新作が若干消化不良気味だったのですが、そんな状況の中であえて内藤さんが退路を断って、相当な覚悟を込めて創り上げたのが今回の新作「予言者・H」。
この作品が劇団の未来にも大きく影響する…と、ドキドキしながら観劇しました。
舞台は再開発が進む中、まだ残っている取り壊し直前のおんぼろアパート。
そこに積もったホコリのように、このアパートに残った記憶たち。
アパートに現れる訳ありの男や謎の女。
まるで「二十世紀の退屈男」かと思えるような展開の中、3組の男女と「予言者・H」というモチーフが絡み合いながら転がっていきます。
近年の内藤さんの劇作に感じられた、ひとつのモチーフを転がしながら、その後ろにテーマを感じるという作り方に加え、初期万歳の「六畳一間シリーズ」に通じる若者の焦燥感を合わせたような物語。
ロマンチックで、デタラメで、自身のかつての記憶が浮かぶような不思議な感覚。
ある意味難解な散文詩のような台詞たちを、自分の身体に落とし込んで表現する劇団員や勇者の皆さん。
まごうことなき、これぞ内藤裕敬、これぞ南河内万歳一座の作品でした。
終演後の挨拶で、次回公演はまだ決まってないと言われた内藤さん。
ということは、確実に万歳を観られるのは6月1日(日)までとなっています。
どうぞどうぞ、この週末は一心寺シアターで南河内万歳一座を体感してください!!