多田淳之介 演出「真夏の夜の夢」


職場(高知市文化振興事業団)の人事異動で、事業担当に戻ってきたのが2022年。翌年の2023年の事業から企画を提案させてもらってます。
提案したのは、この数年開催できていなかった「市民参加の舞台芸術創造事業」。それに加え「やる以上は多様な方が参加できる枠組みで!」という想いがメラメラわき上がっていました。というのは、かるぽーとの事業担当を離れていた7年ほどの間に、かるぽーと以外のさまざまな場所で、さまざまな方達と協働した舞台公演の経験、なかでも藁工ミュージアムのお手伝いで入った「祝祭音楽劇 小さな星の王子さま」の学びからです。
これからの公共劇場が向かうべき大事な道を、民間NPOが先陣を切って進んでいる。いろんなリスクや、できない・やれない理由を並べるのではなく「やってみないと分からない!」と飛び込む仲間の姿に背中を押され「いつかかるぽーとの事業に戻ったら、この道をさらに進めよう」と考えていたのでした。
「共生社会の実現に向けた舞台芸術創造事業」と名付けた本企画は、幸いにも地域創造の3ヶ年の助成をいただきスタートしました。1年目は11年ぶりとなる市民ミュージカル「Gift of Life」、2年目は「祝祭音楽劇 小さな星の王子さま」を大きく改変しての再演。いずれも僕が尊敬・信頼する、高知や関西の演劇人との創作でした。
事業3年目、助成の最終年に、どうしてもご一緒したい演出家がいました。
多田淳之介さんです。
多田さんとは、2013年のリージョナルシアター事業以来、さまざまな形でお付き合いさせてもらってます。演劇の可能性をいろんな形で提示する活動に毎回衝撃を受け、中でも北九州芸術劇場で観た「カルメギ」、四国学院大学ノトススタジオで観た「PEACE」は、自分自身の指針となるような、大切な作品となっています。
そんな多田さんに「高知の皆と作品を創ってもらいたい」と相談をしながら、いろいろな事情で実現出来なかったことを、今回なんとか果たしたい。職場にこれまでの経緯や、なぜ多田さんとの創作が大切かを説明して、本事業が正式に決まりました。
ここから先はあっという間だったなー。
個性豊かな出演者・サポーターの皆さん、スタッフワークも県内外から本当に素敵な方に集っていただき、超短期間・大変ながらも幸せなクリエイションとなりました。
今回のパンフレットに、多田さんはこんなコメントを寄せてくれました。
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芸術は芸術が好きな人だけのものではありません。国語も算数も好きな人だけものもではないのと同じです。とても好きな人、苦手な人もいると思いますが、必要がない人はいません。芸術が国語や算数、いわゆる勉強と違うのは、答えが一つではないところです。一つの答えを見つけるのになれてしまうと、芸術が苦手と感じるかもしれません。自分で考える、自分で答えを見つけられるのが芸術です。そんなの大変、と思うかもしれませんが、世の中を見渡せば答えが決まっていることの方が少ないです。そんな世の中を楽しく過ごすために、自分で感じて、自分を見つけられる体験ができる芸術は、人間が生きていくための発明です。
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多田さんにお願いして、良かった。
打ち上げの席で、りみさんが話してくれた「この稽古場こそが共生社会」という言葉も励みになりました。
劇場っていう小さな場所を、自由で、誰もが尊重しあい、助け合える世界にすることで、劇場の外にもそんな空気が伝播していったらいいなー。
そんなことを考えながら、引き続き舞台制作に励んでいきたいと思います。
みなさん、ありがとうございました!
今も多くの人に愛される、ウィリアム・シェイクスピアの名作「真夏の夜の夢」を障害の有無や社会的立場などの枠を取り払い、個性溢れる参加者と共に上演します。
あえてセリフを使わず身体表現を中心に創り上げる、恋の喜劇をお楽しみください!