劇団太陽族「大阪レ・ミゼラブル」(2017.02.04)

極上ツアー1公演目。劇団太陽族「大阪レ・ミゼラブル」

昨年10月の「演出家だらけの青木さん家の奥さん」で岩崎さんからこの作品の構想を聞かせてもらい「これは見なければ!」と、今回の観劇ツアーのきっかけとなった公演です。

某元知事をモデルにした首長が躍進し、自由な芸術表現が規制され、軍隊が組織され国外で活動し、経済は弱者が搾取され続け、インフラもぼろぼろの傾いた近未来の大阪を舞台に、そこで自分なりの正義を貫く人や、自由を求めて戦う若者、運命に翻弄されながらも愛に生きる人たちを描いた作品でした。

間口の広いアイホールの舞台を効果的に使う演出と、歌の音像がしっかり伝わり、そして聞きよい音響にほれぼれしました。
一方で、個人的に一番見たかった近未来の日本の描写は、残念ながらそれほど踏み込めていない印象を受けました。
シールズを模したであろう若者団体が軍に駆逐される場面などは近未来というよりは70年安保闘争の挫折のイメージそのままで、うーんって思ったり。お話の主軸はそのままレミゼラブルだったので、ご都合主義のように感じたり。
ちょうど昨年見た、ヨーロッパ企画の「来てけつかるべき新世界」のテクノロジーが描く近未来の暗部の描写の方が圧倒的にリアルだったので、政治や社会についても同様に切り込んだ作品が見たかったなーと思いました。
あと、作品として○○元知事に物申す!というメッセージは必須だったんじゃないかなー。そこがあるなしで個人的評価は全然変わったと思います。

マイナスばかりではなく、丁寧なミュージカルのアンサンブルはさすがでした。ヒロインとお母さんの歌は特によかったなー。