遊気舎「新たな地 人水流れて 開く花」(2017.02.05)

極上ツアー4公演目。遊気舎「新たな地 人水流れて 開く花」

当初2日で4本の観劇は体力的に厳しいかと見送る予定だったのですが、観劇されていたすずむさんのオススメもあり、急遽前日に「よし、見よう!」と決めた本公演。素晴らしかったです。

遊気舎さんについては実は存じ上げておらず(不勉強ですみません)、今回外部出演を果たした津野さんのご案内を受けてはじめて知った劇団でしたが、なるほど、これは30年の歴史を持った集団だなと唸ってしまうような作品でした。

総勢27名の登場人物。ワークショップを通じて出演された方も多くいるようで、どう交通整理をしてもとっちらかってしまいそうですが、それぞれの役と関係性がすっと入る丁寧な作り方。戯曲の情報の出し方も絶妙で、下宿の共用スペースにやってくる、そこで暮らす人やお客さん。回想シーンや、窓から見える庭先の光景など、舞台のバランスもそう、全て丁寧に伝えようという意図が全編にわたって染みこんでいるような誠実な作品でした。

劇場のある神戸新開地が舞台。自分にとっては戦争や空襲は教科書やニュースでしか知らないように、17歳の子にとっては阪神大震災も同様の存在になっている。知らないことを知ることの必要さ、伝えていくことの大事さ、けどそれを体験している人にとっては、あまりに生々しくて胸をえぐられるような記憶。
傷ついた街の記憶と、街に暮らす人それぞれが持ってる大小様々な心の傷。家族や恋人の絆の暖かさ(特に4姉妹の会話のシーン、きつい言葉の中に愛が溢れてたな)、それを失った人たち。
あえて書ききらずにいる部分すらも、丁寧さを感じました。

ラスト(中国から取材に来られる場面)の手前の場面。街に暮らす皆さんのリアルの部分と登場人物としてのいろんな想いや記憶が溢れるシーンには涙が出てしまいました。個人的にはあそこで終わった方がよいくらい感動してしまった。

津野あゆみ、一途で不器用な恋をする元ヤンの女性という(ぜったいキャラじゃない)重要な役を頑張っておりました。
今回の作品は、きっと彼女の次のステージに繋がるんじゃないかと思います。
今後も楽しみにしてるよー!