劇団シアターホリック「サド侯爵婦人」(2017.03.18)

昨日はシアターホリック「サド侯爵婦人」を観劇してきました。例によって感想文。

僕の持ってるシアホリの勝手なイメージは、
・曲やダンスに転化するセンスの良さ
・舞台美術を作り込むより、大きなバミリや箱馬を使って「お約束ごと」を観客に共有させる演出
・基本は県立大の学生さんが劇団員なので、育成よりも劇団員を作品に落とし込むことを優先させている(ように思える)
って感じでした。

みんな含めて劇団の個性な訳で、シアホリらしさが溢れるオリジナルの大好きな作品(2015年「希望の星」)がある一方で、近代や古典に挑む時は俳優の技量にうーんってなったり(2016年「樺沢家の三人姉妹」)、とは言いながらそれは期待の表れで、毎回シアホリの作品は楽しみにしてました。

そして今回の作品「サド侯爵婦人」。そしてそこに集った出演陣(客演しかり、シアホリメンバーしかり)。
これは松島さん、今までと違うな。なんかしら勝負をしかけてるな…。と、勝手にドキドキしながら向かった劇場、そこで見た作品は、上に書いたシアホリのイメージを全てひっくり返したものでした。

まず舞台美術の丁寧さ。和装の登場人物が映える障子類。家紋なのかな?対になった床面とパネルに現した模様。この床面の模様はある時は座卓にもなり、ある時は結界のようにも感じるという秀逸なものでした。
映像の使い方も洗練されています。各幕場の説明が文字であるだけで、お客さんの理解度はぐっと上がるでしょう。
いずれもシアホリらしくない(失礼)、過剰さを押さえた丁寧なものです。

その舞台に立つ役者陣。飛び道具を使わず、三島の戯曲に真っ正面から向き合い、役を生きようと必死になっている様が伺えました。
予想をさらに上回るド直球の演出だ。こうなると役者の技量や熱量がそのまま作品に出てきます。

その中でもモントルイユ夫人を演じた小杉村春子。僕がこれまで見てきた彼女の作品の中で、今回が一番響きました。2幕のラスト、花ちゃんとの対決シーンの感情の爆発、凄いスピードで入れ替わる場の主従関係は今回の作品のピークだったと思います。
この人の何かしら生き急いでる様は、表現者としては最高でしょうけど、友だちとして見たら、なんだかいろいろ心配に思えるくらいでした。しばらくはちゃんとご飯食べて休みなさいよ、ホントに…。

もう一人は畠中昌子。彼女が舞台に立つのを見るのは、きっと2012年の「楽屋」以来だと思います。シャルロットの役の難しい、秘めた想いを出る毎に力を変えて表現する彼女の巧さと、エンディングで対峙する時の身体の芯の強さ。立ち姿で見入ってしまいました。

シアホリからは、やはり中平花。膨大な台詞量と底の見えない世界観に、どんな想いで飛び込んだんだろう。松島さんの演出は、彼女にどんな道しるべを与えたのかな。最後の涙はルネ婦人として、そして作品に向き合う役者としての彼女の両面を見たような気がして、なんだかいっしょにググッときた次第です。
他の出演者やスタッフ含め、大変な作品に真っ正面から向き合った皆さんに、大きな拍手を贈ります。
一方で戯曲のどこに光を当てて、どこを強く伝えていくかという面では、もう一歩踏み込んで欲しかったようにも思いますし、演出家の顔ももう少し見えても良かったかなって感じた次第です。けど、それだけ広い深い作品なんですよねー。

そして秋もサド侯爵をテーマに作るのね。次のシアホリがどこに歩みを進めるか、また要注目となりそうです。