世界劇団「班女」(2017.04.01)

世界劇団「班女」観劇してきました。例によって感想文。

本坊さん、恐るべし。「若さゆえのヒリヒリ感」を前面に打ち出しながらも、そんな自身を俯瞰して冷静に作品に落とし込んでいく才能に、やっぱりこの人はタダモノじゃないなーと感嘆しました。
アフタートークで言われていた「まずは戯曲を破り捨てることから始めよう」「(一年間滞在した)福岡の豊かな演劇事情と比較して、自分が立ち向かえるのは“演出”じゃないのかな」というお話にもなるほどなーって思った次第です。

3年前に感じた身体性の弱さは本公演では一切気にならず、それもただ身体が強くなっただけでなく、なにかしらの危うさが絶妙なバランスで表現されていました。冒頭のダンスシーンからして「完成された美しいダンス」ではない、何とも言えない違和感。恋人に再会しようと屋敷を訪ねる吉雄を演じる廣本さんと本坊さんの対決シーンも、怪我するんじゃないかとヒヤヒヤしちゃうくらいでした(多分そう見えて冷静にやってるんだろうな)。

本坊さんの声。こちらも説得力と危うさを両方感じさせる不思議な声。台詞の一語一句を完璧に発声するよりも、今の状況や心情がグサグサ伝わってくる声。

開場時から舞台上で身動き一つせず、自分を捨てた恋人を待ち続ける狂女・花子を演じた赤澤さん。彼女の動かなさと、視線と、わずかな手の動きの、まるでこの世ではない場所にいるような不思議さ。足を組み替えるだけで息を呑んで魅入ってしまう妖艶な魅力。同じセンテンスを繰り返す中で、どんどん両者の状況が変わっていくという演出にも唸ってしまいました。

3者の相手への報われない愛の強さやはかなさを狂気と合わせてむき出しでぶつけ合うような展開。そんな中で吉雄と花子の再会を果たした際に花子の放った「え?」というビックリするくらいの台詞の軽さが、個人的にはこの作品の肝だったように思います。

演劇はこんなにも自由で面白いものなのねー。

この希有な才能を持つ本坊さんは、いよいよお医者さんとしてのお仕事を始められるので、がっちり演劇に携わることは難しいのかなって思ってましたが、どうもそんなことはなさそうで、秋にも書き下ろし(?)で作品を発表されるそうです。
「また観に行きたい!」と強く思える表現者に出会えたこと、うれしみはっぴねす。