劇団33番地「溜me池」(2017.09.17)

久しぶりの台風直撃。
県文、美術館、かるぽ、X-ptと軒並み公演中止となる中、自分の知る限りでは唯一開催した劇団33番地さんのミュージカル公演「溜me池」を見てきましたよ。例によって感想文。

その前に、公演を強行せざるを得ない劇団事情も理解できるのですが、制作的には「予定通り開催します」だけじゃなく、①強行開催する理由、②来場できない方に対するサポート(返金や振替対応など)、③来場される方への注意喚起、の3つの案内は必要だったんじゃないかなって思います(前回公演の「演出の都合上、開演時間に遅れたら入場できないので、定刻までに入場を」って案内しながら実際は大幅に開演を遅らせたことを思い出した次第)。
かおりさんはじめ、33番地の制作はしっかりしてるイメージなので、余計にこういうことは丁寧にしないといけないよなーと思いました。

で、作品について。
まず客席。4ステ完売、各回100席ほど設定していたにも関わらず、自分の見た回は50人弱のお客さま。
あの状況でも劇場に足を運ばれるほど熱心なお客さまなのは間違いないけど、やっぱり外的要因で作品に集中しにくい環境で、舞台と客席の関係性の大事さを考えてしまいました。

で、やっと中身につきまして。
チャーリーさんらしい、あたたかな、でも不思議な、ふだんから何を考えてるか分からないチャーリーさんの頭の中を少し覗いたような作品でした。

ある青年が高速道路でパンクをし、溜め池の近くでロードサービスを待つ間に出会った人との不思議な話。
最初は、池にまつわるエピソードが複数出てきてリンクしていくのかな?って思ってたのですが、エピソードはシンプルにひとつ。その分かりやすさと現代への繋がり方、時間(場面)の移動の仕方は面白かったですね。全然関係ないところで、最初のゴルファーと釣り人のくだりは、あなたたちの実生活そのままじゃないか!って思わず笑ってしまいました。

ダンスはみんなお上手。その中でもさやかさんの動きには目を見張りましたな。
振り付けもミュージカルらしくないコンテンポラリーのような動きもあって、お!と思いました。
楽曲はこれまで通りmasacoさんの書き下ろし!贅沢!
33番地の俳優は普段から基礎練をしっかりされているからこそ、立ち姿や重心移動、声量(歌も生音でしっかり聴かせられる)と、舞台に立つ上で当たり前のことをちゃんとできている、というのは強みですね(と言いながら、全体のレベルが高くなると、そこに届かない人が悪目立ちしてしまう箇所もちょっとありました)。

特筆すべきは舞台装置。
あの仕掛けをオーダーするチャーリーさん、そして実際に作ってしまうグリーンルームさん、すごいなー。
予算が潤沢にある大きな劇場の公演ならそこまでの驚きじゃなかったのですが、蛸蔵の狭い空間でのあの演出、衝撃でした。

気になった箇所としては、これはチャーリーさんの作品にだいたい共通してるのですが、すべての要素が腑に落ちることは非常にまれで、例えば途中のダンスシーンなど「これは何を意味してるのだろう?」みたいな、ヘンな余白・ヘンな違和感が残るのは、きっとあえてのことなんでしょうかねー。
想像を膨らませる楽しみではあるのですが、その余白が例えば社会とか、人生の何かに繋がるよりも、チャーリーさんの脳内を覗くような、冒頭にも書いた不思議な感覚は、もう33番地ならではですな。これを良しとするか否かでこの劇団の評価が分かれると思います。

いろんな変遷を辿りながら、第10回公演を迎えた33番地。
ミュージカルという、小劇場の演劇公演と比較して、お金も苦労もかけながら、劇団を10年以上続けていったことは素晴らしいと思います。
これからも、愛の溢れる作品を期待してますよー。