現代地方譚5 AIR須崎関連企画「須崎のまちの物語」(2018.01.27-28)
「須崎のまちの物語」。振り返ります。長いです。
僕の師匠、南河内万歳一座の内藤さんから「いま、こんな面白いことをしてるんだよ!」と、「Re:北九州の記憶」の立ち上げの話を聞いたのが6年くらい前かなー。それから、いつか高知でもそんな企画をやりたいなーと思い続けて6年。
そして、開館以来続けていた、かるぽーとの自主事業担当を離れて3年。
昨年からシアタコのお手伝いを中心に、高知市以外で舞台制作の機会をいただけるようになりました。
赤岡の赤レンガ商家での公演、土佐山田公民館での香美市異界談義、本山町プラチナセンターでの嶺北中学校の発表。そして、今回。
市民ミュージカル「音の旅人」からの付き合いの、すさきまちかどギャラリーの佐々木かおりさんより「アーティストインレジデンス須崎の企画として、演劇公演を考えている」という相談に、ポンと「北九州の記憶のフォーマットや!」という直感が浮かび、内藤さんに相談し、北九州芸術劇場さんに資料を提供いただき、すずむさんにWSをお願いし、そして心から信頼する高知の劇作家3人(坂下さん、吉良さん、西本君)に声がけして企画は動き始めました。
取材の心がけを内藤さんより伺い、実行委員の佐々木さん、古谷さん、斧山さんから取材対象の候補の方を紹介してもらって取材が始まったのが10月。
全ての取材に立ち会いたかったのですが、仕事の都合で叶わず、結局西本君の取材に同行しただけとなりました。
そこでお話を伺った皆さんはホントに素敵で、何気ないエピソードの中にもじんわりと愛情がこもっていて、「まち」と「人」と「暮らし」が自然と浮かび上がるような、なんとも幸せな時間でした。
出演者の公募も同時にはじまりました。
最初に設定した目標は「未経験でOK、須崎の方に多く参加してもらいたい」「ストイックな作品制作とは違う、参加者の負担の少ない公演形態」「演劇になじみの少ない方にも伝わりやすい作品」の3つ。
もくろみ通り、18名の出演者のうち、約半数は「はじめまして!」の方々。
作演出の3名にもこの意図を伝えて、ドラフト会議(出演者割り振り)をして、全員で顔合わせしたのが12月19日。
そこからお正月を挟んで非常に短い稽古期間、少ない稽古回数の中での上演となりました。
未経験の方と作品を作る以上は時間をかけて、稽古を重ねた方が間違いなく良くなるのは承知しているし、作品のクオリティを高めるのが目標なら、出演者公募をせず、実力のある役者に声がけすればよいのですが、今回の目標はそこじゃない。
とはいえ今回が初めての取り組みということで、一定以上の評価を得る内容にしないといけないというプレッシャーもあり、本番に向けてさまざまな作業に追われながら、どんどん胃が痛くなる日々でした(笑)。
小屋入りしてからは、スタッフの数も少ない中でバッタバタと作業が進みます。舞台しかり、制作用務しかり、基本足りない箇所は全て自分が補うというつもりだったのですが、さすがにキャパオーバー。同じく制作周りと出演という難しい役目を担った佐々木ホゲ子もキャパオーバー。それを救ってくれた領木さん、委員長、すみこ、ゆかさんには、心から感謝です。なにこのみんなの安定感ったら。もう、大好き。
小屋入り以降のスケジュールはひっじょうにタイトで、本番前日の通しはギリギリの状態。自分が受け持ったブリッジチームを見てやることすらできない状態でみんなにご迷惑をおかけしました。
稽古後も深夜まで3人の作家とやり取りを続け、翌日午前中でどこまで作品をよくできるか、なんだかイチかバチかみたいな気持ちで当日を迎えました。
迎えた本番。
前日の通しから圧倒的に進化した、奇跡のような本番になりました。
当初設定してた作品の及第点を大きく飛び越え、ひょっとしたら実力者を集めた公演よりもお客さんに何かを届けられたんじゃないかなー。
こんなことってあるんだなー。
舞台って不思議ね。
3本の戯曲と、それをつなぐまちの声。
時代を超えて浮かび上がるまちと人の営み。
それを見つめる暖かなまなざし。
「須崎のまちの物語」は「わたしの物語」であり「須崎の未来の物語」であるという素敵な感想もいただけました(詩織ちゃんありがとう)。
しっかりとしたひとつの作品としてお届けできたのは、やはり3人の作家と自分が、全てを言い合える関係だったからこそだろうな。だからこそ各チームの関係もどんどん深まっていったように感じます。
打ち上げのみんなのはっちゃけぶり、号泣ぶりに、こっちもジーンとしちゃったよ。
あー、幸せな現場でした。
関わっていただいた全ての皆様に、大きな感謝と愛を送ります。
みんなー!またやろうねー!
(とはいえこんなミラクルはそうそう生まれないのも知っている。すでに次回のプレッシャーがじんわりと…)