極東退屈道場「ファントム」(2017.11.25)

本日はアイホールにて、極東退屈道場「ファントム」を見てきましたよ。

林慎一郎さんの作品は、昨年かるぽーとで上演された「PORTAL」、今年2月に山本能楽堂で見た、能×現代演劇「心は清経」に続いて3回目で、ご自身の主宰するユニット・極東退屈道場の公演としてははじめての観劇でした。

いやー、すごいのん見た!

客席に入ると飛び込んでくる舞台美術。
高架下のような、排気ガスですすけまくった枠組みの中、ひし形の台が高さを変えて規則的に並んだ舞台。

コインロッカーの鍵を拾った女性が入り込む世界は、まるで浅い眠りの中で見る夢が連続して続くような、バラバラなのに断片が繋がっている不思議な「街」。

PORTALの時も同様に「街」「都市」を描いていましたが、PORTALは、なんというかカメラワークがダイナミックすぎて、ジェットコースターに乗っているような感覚だったのが、今回はしっかりじっくり、登場人物の視点で夢の世界を追うことができました。個人的には今回が好みです。

街の音は波の音のようでもあり、ホワイトノイズのようにも感じるなぁ。
右手に恋をする男。
つぎはぎだらけの女。
生まれること。
死んでしまうこと。
昼の街で働く男。
夜の街で働く女。
遠い記憶。

場面によってはシリアスな空気の中で急に飛びこんでくる、なにげない言葉のやり取りに失笑したり、震災を連想して胸が締め付けられたり、林さんと世代が近いのもあるんだろうけど、自分が小学校に入るか入らないかの時に見てた・感じてたような世界が再現されたり(ビーボのくだり、あのコピーはどういう意味なんだろうかと当時真剣に考えていました)、1時間45分の作品の中にいろんな情報が詰まりまくっていて、たとえばエロスだったり生死感であったりノスタルジーだったりをまとめて味わうことはまずないなー。

この情報や感情が頭の中でぎゅうぎゅう詰めになる感覚、楽しい。
このこんがらかりそうな感覚を観客に届けようとする林さん、すごい。

お話の中で一番グッときたのは、アイドル三人組のくだりです。
「人に芸を見せることとは、どういうことだろう?」とアイドルが客席に投げかけ、自分の仮説を説くのですが、その仮説がなんとも衝撃的でした。
これはどうぞ現場で作品を見るか、台本を買うか、見られなかった人はDVD化されたら鑑賞会をするので、そこでみんなで見て、やいやい言い合いたいですな。

あー、つくづく面白い作品だった!
さらにこの作品はリピート観劇は無料!という太っ腹企画があるので、もう一回見たかったなああああ。
出演の皆さんも、本番を重ねることでもっと伝わりやすく、面白くなりそうだなって思ったくらいだから、見る側からしたら、もっともっと新しい発見が生まれそうです。

いやー、林さん、すごい。
みなさん、明日の千秋楽、名古屋公演も頑張ってくださいねー!!

以下余談。
楽屋のケータリングの足しにとごっくん馬路村を差し入れたのですが、観劇終わって帰りのロビーで、差し入れた以上の飲み物やらミカンやらお菓子やらパンやらを袋に入れて持たせてくれた奈良さんは、まごうことなく親戚のおばはん状態でした(失礼)。
奈良さん、お気遣いさせてしまってごめんなさいねー。ホンマに素晴らしい作品をご案内いただき、ありがとーございました!!