おさらい会「宮城野-MIYAGINO-」(2018.04.14)

昨日は劇団33番地の稽古場にて、おさらい会「宮城野-MIYAGINO-」を見てきましたよ。例によって感想文。
おさらい会は演会初代代表の西村さんと、気鋭の俳優・山田君を中心に結成された劇団で、当日配布されたパンフを読むと劇団のミッションが丁寧に記載されており、関心しました。劇団の目的を明確にすることは大切なことだ。

その中で、(ここから引用)「舞台芸術で地域をステキに変える」というミッションを揚げ、作品の製作と上演による「Creation LAB.」と演劇的手法によって社会的課題にアプローチする「Application LAB.」を試みる。(引用ここまで)とあったので、おそらく今回は「Creation LAB.」の方であろう。ほんじゃもう一個の「Application LAB.」の方はどんな活動なんじゃろうかと、活動記録をみてそれらしいものを検索したもののヒットせず。
限られた対象の方への事業でも、それを幅広く発信することで新しい繋がりができたりもすると思いますので、どうかこの辺も頑張っていただきたいと思った次第です(あと公演情報も、もうちょっと早くいただけたら嬉しいな)。

さて作品について。
江戸の色街を舞台に、女郎・宮城野(まゆさん)と、絵師・矢太郎(山田君)ふたりによる会話で進む物語(もうひとり、コロスと言って良いのか、舞台袖から響く西村さんの声も効果的でした)。
師匠を殺してしまったと宮城野に告白した矢太郎の罪の意識と、焦りと、自己を肯定する感情の揺れ。さらに宮城野に対する想いと、師匠の孫娘との恋愛感情。極限状態に追い詰められた弱い男の、瞬間瞬間で揺れ動くさまを見事に表現していました。

ふたりの会話とはいえ、基本はお互い客席正面を向いて話す演出だったので、話す側と受ける側の表情がダイレクトに伝わるところも良かったです。今回は自然と聞く側に視線が行ってしまい、特にまゆさんの表情の変化が良かったなー。
また、動きの少ない会話の中で、師匠を殺した回想シーンの山田君の感情の昂りと、首を掴む両手の動きの生々しさよ…。

物語に話を戻すと、前述の通り、矢太郎の弱さや心の揺れには(ダメ男子として)非常に共感できたのですが、逆に人の業を受け入れて遊郭に売られ、そして矢太郎に尽くした上に師匠殺しの罪まで背負おうとする宮城野という女性像については、男性側から見たご都合主義なんじゃないかなーとも思ったのですが、同じ回を見た某女史が「例えばDV被害を受けている女性は、その中でもそこに自分の幸せや存在意義を感じているものだよ」と言われて、目から鱗が落ちた次第。
終演後に西村さんが#me tooのことも少し言われてましたが、確かに古典・近代の作品から、現在が浮かび上がっているのかもしれませんな。

33番地稽古場という独特なスペースで行われた本公演。
パッケージを軽くして、地域の公民館なんかで10〜20人を前に作品を届けたいと言う西村さん。そうやって公演を重ねていくことはとても大事な事だと思います。引き続き頑張ってくださいねー。

最後にひとつ。三味線は、今回の物語の起点と終点という大事な意味を持つと思うのに、あえてあの状態で披露したのは、この作品はまだ制作途中という謎かけなんだろうか?と、不思議に思ったことでした。はて??