(寄稿)南河内万歳一座30周年記念本
「南河内万歳一座と高知」 吉田剛治
「まだ見ぬ観客との出会い」を求めて、万歳がはじめて高知に来てくれたのは1999年のこと。その後少し期間が空き、2005年より自分が勤めているホールを中心に、さまざまな形でお付き合いをさせていただいている。
万歳のみんなは「まだ見ぬ観客との出会い」なんてさらっと言うが、実際はとんでもないことである。特に小劇場の劇団が高知のような土地で、正攻法で地方公演を成功させるなんて…まるで枯れ木に花を咲かせるような難題だ。
実際、はじめて一緒に仕事をさせてもらった2005年の「みんなの歌2」は、動員面では非常に厳しいものだった。さまざまなプロモーションを行ったものの反応は薄く、公演当日ロビーでぐったりしている自分に、本当はそれ以上にショックを受けているだろう制作の奈良さんは「大丈夫やから芝居を見はってください」と言ってくれた。で、見た。「あ、おもしろい」。衝撃だった。舞台・役者・戯曲・音楽が奏でる見事なアンサンブル。「これはみんなに見せたい」と、頭でなく、心から思える芝居だった。
厳しい状況にもかかわらず、万歳は次の年も来てくれた。「一回こっきりでケツを割ってちゃダメなんだよ。苦しくっても同じ土地で3回はやるって決めたんだ」と内藤さんは言ってくれた。
そうやって回数を重ねる内に、少しずつ小さな繋がりが生まれ、その繋がりが拡がっていった。内藤さんに務めていただいた高校演劇の指導や審査員、地元の演劇団体で組織される高知演劇ネットワーク・演会との役者同士の交流、WSで積み上げてきた新たなお客さん、マスコミ関係にも万歳のファンが少しずつ拡がっていった。
来年2月、万歳はまたやって来てくれる。そして万歳の公演に合わせ、地元の演劇団体の選抜メンバーによる内藤さんの作品の上演も決まった(無理を言って演出も内藤さんにお願いをした!)。
まだまだ地方公演の成功なんて言える所じゃない。それでも高知で、万歳の芝居を楽しみに待ってくれる人は増えていくはずだ。美味しい肴を準備して、万歳の来襲に備えよう。