点々の階「点転」(2021.03.01)

昨日は大阪スペースコラリオンにて、点々の階「点転」を観劇しました。
久野那美さんによる演劇ユニット、階。
今回の作品「点転」は、2017年に上演された「・・・」を改題・改作したものだそうです。

この作品を2018年に蛸蔵にて高知の若手演劇人の底上げを目的としたタネマキカクで上演したことで、さまざまな形で久野さんはじめ関西の皆さんとのご縁が生まれた思い入れのある作品。そして読めば読むほどに思考が定まらず、いろんな方向に考えが散らばってしまう不思議な戯曲。

初演との大きな違いは、2バージョンで上演した「白靴下の男」と「黒靴の女」が同時に舞台にいることでした。

弔う人と弔われる人。
ある時まで見えていて、ある時から見えなくなる存在。
「消える」ということは、肉体なのか、精神なのか、相手の記憶からなのか。

小説家の謎。
師匠の謎。
宇宙人の謎。
競技の謎。

帰りの車内で登場人物の小説家について「あれだけの数の本を出版しているということは、売れっ子だからじゃない?そうじゃないと出版社は取り合わないでしょう?」という私の疑問に対する吉良さんの「ひょっとして自費出版とか?」という推察には唸ってしまいました。
そこまでして…そこまでの執念を持って報われたいと書き続け、結果本人の願いとは裏腹に、極々限られた対象が救われる作品を世に送り続ける小説家って…。

そして17年前に別れてからも、小説家の出す作品のおそらく大半を購入し、彼の作品を求めているであろうピンポイントな状況の人に本を貸し、「自分の葬儀の時に、作者に返却して欲しい」と頼んでいた師匠。
「これは復讐か?」とつぶやく小説家から、いったいこの二人はどういう付き合いで、どういう別れを経て、そこからどんな17年間を過ごしていたのか…?特に師匠の行動は、もう人間業ではない、ある意味神様のような所業ではないのかしら…。

登場人物だけでなく、良い意味でも悪い意味でも、何かしらの影響をお互いに与えあって生きている世の中のギュウギュウさよ。
ああ、思考がまとまらない。
そんな観劇体験、そうそうないや。

劇場、素晴らしい空間でした。
スタッフワーク、素敵でした。
ご出演の皆さん、魅了されました。
みなさま、ありがとうございました(脳みそグルグル)。